「君と見た虹」
「皆さん、空を見上げてください!体育祭日和の晴天が広がっています!」
委員長の挨拶で盛りあがる生徒たち。全員が一つの空を見上げて声を上げていた。
あの人にちらりと視線をやってから空を見上げ、今は同じものを見て、同じ気持ちを抱いているんだなと嬉しくなった。
「あ、虹が出てる…」
空の端に消えてしまいそうな虹が浮かんでいた。
あの人は気づいているだろうか。再び視線を下ろしてみると、もう友達とのおしゃべりに夢中なようで。
ふふっと自然に笑いが溢れてしまいながらもまた空に視線を戻した。
「いつか2人で見上げられますように。」
そっと虹にお願いした。
「夜空を駆ける」
深夜1時すぎ、何となくSNSを見ていたら突然流れ込んできたあの人の投稿。綺麗な星空の写真には星がよく見えることで有名な高原の名前と星の絵文字だけ。
まさか1人ではあるまいし、一体誰と?
片思い中の頭は色んな憶測でいっぱいになり、苦しくて部屋の窓を思いっきり開けた。ひゅっと冷たい風が流れ込んで躊躇うも、ぐっと堪えて乗り出してみる。
窓の外に広がるのはあの人があげていたものとは到底比べ物にならない2、3粒の星空。
「空は繋がってる、なんて嘘みたい。」
ぼそっと呟いたら住宅街の闇に消えていった。
このまま空を飛んで会いにいけたらいいのに、なんて、今飛べても気持ちの重さで落ちそうだなと笑って窓を閉めた。
「終わりにしよう」
「もう終わりにしよう、頼むからもうやめさせてほしい。これ以上隣にいられない。」
泣きそうな顔でそんなこと言われたら、嫌だ、なんて言えなくなる。
好きだと言って君が離れていってしまったら、なんて考えて、友達が精一杯の関係だったのに。
友達ですらいさせてくれない?
あんなに楽しかったのに、君はその間苦しんでたの?
何で、何で。君に向ける気持ちが重たすぎるから?それとも誤解されたくない人でもできたから?
「こんなに大切に思ってるのに、君の大切な人は自分じゃないなんて、耐えられない。どんなに楽しくても、もう平気なフリして笑えないよ。」
君はそう続けた。涙ももう溢れてしまっている。
それはつまり、もしかして…
「わかった。もう終わりにしよう。そして恋人になって欲しい。君が何よりも、誰よりも大切だから。」
そう、同じ気持ち。確認するように君の表情を見る。みるみる笑顔になる君を抑えきれず抱きしめた。
終わり、って悪いことばかりじゃないんだ。
「夏」
夏の匂いがした。
どんな匂い、と言われても夏の匂いは夏の匂い。
照りつける太陽にバテそうだけど、なぜかドキドキして浮き足立ってしまう、そんな匂い。
海に行きたい。アイスが食べたい。お祭りにも行って、花火も見たい。
そして隣に居るのは君がいい。暑さなんて吹っ飛んじゃうくらい爽やかで、でも太陽よりも明るい笑顔で、笑いかけていて欲しい。
そんな君の手を握って、結局熱くなってしまったとしても…。
「最悪」
今日は最悪な日だ。
たった一度のチャンスだったのに。髪型も、やる気も、何もかも完璧にしたはずだったのに。
自分のせいで、時間をちゃんと確認しなかったせいで…。あの人とはもう二度と会えない。何でこんなミス、今日なんだ。
最初で最後の気持ちを伝えるチャンスだったのに。