おばあちゃんに今一番欲しいものをきかれて、僕は返答に詰まった。
本当は、僕だけの味方が欲しい。僕に忠実な賢い犬、とか。飼うための土地付きの家、とか。
でも、流石の僕でもそんなことをおばあちゃんに言って困らせられない。かと言って「僕が欲しいのはおばあちゃんの笑顔だよ。」なんて恥ずかしくて言えない。
ゲームやトレカの最新弾も欲しいっちゃ欲しいけれど、それらをおばあちゃんに買ってもらうのは大変だろう。今やゲームはほとんどダウンロードだし、トレカも種類があるしすぐに売り切れる。
悩む僕に一瞬寂しそうな顔をして「じゃあこれで好きなものを」とお金を用意しかけたおばあちゃんを、慌てて止める。
「パフェ!駅前のお菓子屋さんのでっかいパフェ!おばあちゃん、一緒に連れて行ってよ!」
僕、我ながらふぁいんぷれいした孫ではなかろうか。目の端で小さく親指を立てたママを捉えながら、僕はふんすと笑顔で息を吐いた。
少しして小さなハムスターを買ってもらった僕が、掃除を怠って、ママに「あんただけはハムすけの味方でないとダメでしょ!」と怒られるのは、また、別の話。
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私が欲しいものね。自分と大切な人達の心身の健康と自分を俯瞰して動かすコントローラーかな。
さ、今日もできれば楽しく、私を動かそう。
「ザコメガネ」としか私を呼ばなかったアイツが、はじめて私の名前を呼んで「頼む。置いて行け」と言ったから、私もアイツの名前をはじめて呼んで「嫌だね、あんたも一緒にだ」と微笑んだ。
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一文で好きなシーンを書いてみました。
古今東西様々な物語にある、蔑称で呼び合い常に喧嘩腰だった二人がここぞというところで名前を呼び合うシーンが、好きです。どれだけ手垢がついていても作品の度にカーッたまんねー!と叫びたくなってしまいます。
ちなみに、私のここでの名前は、私がこのアプリを始めた日付である20 24年5月28日が由来です。
私の適当な作品が、適当に書いていいんだなという気休めになれば良いなと思い、それなりに気に入っています。
あの子の姿を追うあの人の横顔なんて
目に入れなければよかったのに
あの子の話をするあの人の口の端なんて
気付かなければ良かったのに
あの子の視線の先にせめて
あの人がいたら諦めがついたのに
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犬をはじめとした動物が大好きなあの人は、驚く程にその動物達に塩対応される才能を持っている。
今日も犬と触れ合えるカフェに連れてこられたのだが、彼女の周りには蜘蛛の子を散らす勢いで犬が居ない。私が顔をべろべろ舐められているのにも関わらずだ。
実は私は寧ろ動物は苦手なのだが。
こちらを睨むのは、やめてほしい。
できればあの子を見る熱意の半分でもその視線に込めて欲しいなと独りごちた。
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※フィクション
あの子=犬
あの人=動物好きな女性
私=女性に好意を持っているが故に動物好きなフリをしている男性
三角関係を書こうかな、ありきたりかなと思い悩んでいたら、いつのまにかミスリーディングものになりました。
私だけは、私を好きが良い。
私だけは、私の味方でいよう。
私だけは、私を褒めるべきだ。
そんなよくある言葉にずっと憧れて
ずっと実践できずにいる気がしている。
そんなことを意識しなくたって、
私は十分自分勝手だろと
ツッコむ「私なんか」と争いながら
私を考えずにいられる時間を探している。
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カレー鍋にこびりついたカレーのおこげ的なものを鍋を抱えて食べるのを許されるのは、カレーを作って後片付けする私だけだと思っている。こそげてパンにつけても、ご飯で炒飯的にするのも美味いよねぇ。
ま、人前ではしませんけどね!
ゲームの格闘技をかけてくるか
やたらとくすぐってくるか
バーカバーカと言ってくるか
いつもろくなことをしてこない兄
その兄が、
悪夢を見て泣いている私の頬を
無言で拭ってくれたあの日の真夜中
遠い日の記憶
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あまりにいつもの兄らしくなくて、今でも半分夢だったんじゃないかと思っている。