「夜のほろ酔いさんぽ」
都心の喧騒から離れて、初めてのふたり旅。
あえて駅から離れた場所のホテルを予約した。夕食なしのプランを選んだのは、夜道を歩きたかったからだ。
夜空に浮かび上がるように佇む建物の灯り。
「やっぱり、ここじゃ星は見れないね」
ほんの少しだけ期待していた。
「一応、この辺りはまだ市街地みたいだからなぁ。やっぱり山奥とか行かないと満天の星空は無理だろ」
「そうだね。でも、これはこれで幻想的だと思う」
天の川を見るのはまたの機会に。
────Midnight Blue
2025.08.22.
「ぐるぐる回って」
彼女が振り向いて、笑顔を見せた。
流れる涙を拭いもせず、駆け寄ってくる。
抱き止めるように受け止めて、そのままぐるぐると回ってしまった。
周りの迷惑になったかと、一瞬思ったが、周囲も似たような雰囲気で、誰も俺たちのことを気にしていない。
「合格おめでとう」
「おめでとう」
「またよろしく」
「うん、これからもよろしくね」
たぶん、きっと、ずっとこれから何年どころではなく。何十年先も。
まるでプロポーズみたいなことを言いそうになってしまい、いや、今じゃ無いだろ。と空を仰いだ。
────君と飛び立つ
2025.08.21.
「一日でも永く」
「今日のこと、一生忘れない。記憶喪失になっても」
「その言い方、フラグっぽいぞ」
「私がもし忘れても、思い出させてくれるでしょ?」
忘れてもいい。
すべて忘れてもいいから、一日でも永く隣に居たい。ただ、それだけ。
こんなこと、重過ぎて自分でもドン引きするから、言えない。言わない。
────きっと忘れない
2025.08.20.
「そんなに俺に会えなくなるのが寂しい?」
「なんでもない」と、ひたすら繰り返す。
「俺のせい?」自惚れたような表情。
「そうだよ」なんて、絶対言わない。言えない。言いたくない。
すべて私のせい。
彼女持ちの人を好きになった私のせい。
────なぜ泣くの?と聞かれたから
2025.08.19.
「秋の足踏み」
足音は聞こえているのに、なかなか姿を見せてくれない。
そんな感じがする。
赤く染まる空の向こう。
────足音
2025.08.18.