「いつかふたり離れる日を」
こんなにうまくいってるのに、いつか離れる日が来ることを想像してしまう。
「恋愛において、男は名前をつけて保存、女は上書き保存」などと言われるが、もしも君と別れたら俺は何重にもバックアップを取って永久保存するだろう。
君と手を繋ぎながら考えることじゃないけど、いつか君が俺の手を振り解く日が来ることを想像してしまう。
そして、他の誰かのものになってしまうところまで。
いまだに君が俺を選んだことが信じられなくて、これは現実ではないのかもしれない、と時々本気で思う。
君が微笑むたび、あとどれくらいこの笑顔を独り占めできるのだろうか、なんて考えてしまう。
いつか別々の道へ進むことになっても、俺は驚かない。
君が俺のことを忘れてしまったとしても、俺が覚えているからいいんだ。
ただ、欲を言えば、最期のときに「もしもあの人と一緒になっていたら、今ごろどうなっていたかな」と、俺のことを一瞬でも思い出してくれたら、それでいい。
────忘れられない、いつまでも。
「好きになったら契約解除」
どちらかが本気で好きになったら、即契約解除。
そういう条件で、私たちは付き合っているフリをしている。
二年間の期間限定。
前半の一年は、難なく過ごすことが出来た。
だが、最近は雲行きが怪しくなってきている。
これは仕事だと自分に言い聞かせている日々。
熱のこもった視線。
触れる指先。
頬にかかる息。
あなたの言動ひとつひとつに惑わされる。
これは、恋人のフリ?
私をからかっている?
それとも……
私がその気になれば、即契約解除。
あなたはそれを狙っているの?
それとも本当に私のことを……
契約満了まであと半分。
──── 一年後
「覚えてないから、ずっと続いてる」
君に恋したのは、いつなのかなんて、覚えていない。
物心ついた頃には、すでに隣にいて大切な存在だったから。
初めて君にときめいたのも、いつなのか覚えていない。
だけど、今でも毎日のように君にドキドキしている。
「はいはい、わかってるから」
君はそう言って笑う。
そりゃそうか。
俺たちの娘は、もう高校生になるんだし。
さすがに聞き飽きたのかもしれない。
俺は言い飽きてないんだけどな……
明日からはちょっと言い方を変えてみるか。
────初恋の日
「その手には乗らない」
「明日、この世界が終わります」
そんな報道されたとしたら、確実にフェイクニュース扱いされるだろう。
信じない人が多いなかで、じわじわと崩壊していく世界の映像が報道されていく。
それでもたぶん、多くの人たちは信じない。
自分の目の前でそれを見るまでは。
世界の終わりへのカウントダウンは、なんのためにするのだろう。
絶望から自暴自棄になり、一気に悪化していく治安。
崩壊していく人間社会の倫理観。
それらを一種のエンターテインメントとして扱いたいからだろうか。
なんて悪趣味。
そんなことになったら、絶対に取り乱さないし、嘆かない。
普段通りに生活する。
明日があると信じて、今日を終える。
明日が来ないと知っていても、未来があることを信じたままでいたいから。
────明日世界が終わるなら
「わかりあいたい」
知らなかった感情を知るのは、良いことなのだろうか。
知らなければ知らないで、別に困ることはないだろう。
ずっとそう思っていた。
君に出逢うまでは。
他人の気持ちなんて、百パーセントわかるはずがない。
だから、何を言っても無駄だと諦めていた。
君に出逢うまでは。
君のことを理解したい。
君にわかってほしい。
そんなことを思うようになるなんて。
────君と出逢って