「なによりも辛い罰」
「あなたになら、ひどいことをされてもいいの」
だって、私はあなたを傷つけてしまったから。
赦してほしいなんて言うつもりはない。本来なら赦されないことをしたのだから。
だから、私のことを煮るなり焼くなり好きにしていい。
覚悟を決めた私の言葉。
一瞬、困ったように眉を下げたあなたは優しく微笑む。
そんな風に笑わないで。
無かったことにしないで。
────優しくしないで
「貴女を奪えたらどんなに」
灰色だった僕の世界を、貴女は色鮮やかなものに変えた。
貴女は僕の頭を撫でる。
まるで、年の離れた弟にするかのように。
まったく異性扱いされていないことはわかっている。
貴女に触れられることが嬉しい自分が悔しい。
貴女の笑顔はいつも眩しくて、春の花のように鮮やかで、思わず瞼を閉じてしまう。
貴女が嬉しそうにあの人のことを話すたび、僕の心には血のような赤黒いものが広がっていく。
嫌になるほど真っ青で澄んだ空を見上げる。
貴女が生涯を誓った人。
どんな人なのか、知りたいけど、知りたくない。
惚気話を聞きながら、どうやったら貴女を奪えるのかを考えている。最低だ。
奪う勇気も度胸も力もないくせに。
────カラフル
「鍵がかかってない檻」
「楽園って、鍵がかけられていない檻みたいね」
君はそう言って、肩にかかる髪を払った。
楽しいことしかない世界。
最高じゃねえか。
「そう?私は怖いけど」
毎日毎日楽しいことばかり。
それに慣れてしまったら、そのうち楽しいことが楽しくなくなってしまいそうで怖い。
外の世界は楽しいことはほんの少し。
楽しいことに慣れてしまったら、もう外に出る気にはならないのではないか。
真面目な君らしい考え方だ。
「なるほど……」
それは、いいかもしれない。
楽園が、鍵がかけられていない檻だというのなら、君を楽園に連れて行きたい。
そうしたら君をそこにいつまでも閉じ込めておけるから。
────楽園
「I miss you」
空が同じなら、きっと空気も同じ。
空気が同じということは、風もまた同じ。
この風が流れ、君の町に届くまでどれくらいかかるだろう。
声も気持ちも、そのまま届けられたらいいのに。
無機質な文字や電気信号を介したら、全部ちゃんと伝わらない気がする。
直に会って話しても、すべて伝わらないこともあるから。
「会いたい……」
零れ落ちる言葉と涙を、風が攫っていく。
────風に乗って
「好きになってはいけないひと」
きっと好き。
好きかも。
たぶん好き。
そう思う時が短すぎて、自分でもわからなくなっていたのだろう。
どういう感情なのかわからないまま、瞬きするよりも短い時間に感じて積み上げてきたものを、分析して言語化することは難しい。
気がついた時には手遅れで、離れたくても離れられなくなっていた。
この関係を崩すことは出来ない。
気がつかなかったことにする、と決める。
たぶん、それが最善。
今あるものを壊したいと思ってしまうほど、好きになる前に。
────刹那