小絲さなこ

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5/2/2024, 2:14:46 PM


「なによりも辛い罰」



「あなたになら、ひどいことをされてもいいの」

だって、私はあなたを傷つけてしまったから。
赦してほしいなんて言うつもりはない。本来なら赦されないことをしたのだから。
だから、私のことを煮るなり焼くなり好きにしていい。

覚悟を決めた私の言葉。
一瞬、困ったように眉を下げたあなたは優しく微笑む。
そんな風に笑わないで。
無かったことにしないで。




────優しくしないで

5/1/2024, 2:17:59 PM

「貴女を奪えたらどんなに」


灰色だった僕の世界を、貴女は色鮮やかなものに変えた。


貴女は僕の頭を撫でる。
まるで、年の離れた弟にするかのように。

まったく異性扱いされていないことはわかっている。
貴女に触れられることが嬉しい自分が悔しい。

貴女の笑顔はいつも眩しくて、春の花のように鮮やかで、思わず瞼を閉じてしまう。


貴女が嬉しそうにあの人のことを話すたび、僕の心には血のような赤黒いものが広がっていく。


嫌になるほど真っ青で澄んだ空を見上げる。

貴女が生涯を誓った人。
どんな人なのか、知りたいけど、知りたくない。

惚気話を聞きながら、どうやったら貴女を奪えるのかを考えている。最低だ。
奪う勇気も度胸も力もないくせに。



────カラフル

4/30/2024, 2:22:00 PM


「鍵がかかってない檻」



「楽園って、鍵がかけられていない檻みたいね」
君はそう言って、肩にかかる髪を払った。

楽しいことしかない世界。
最高じゃねえか。

「そう?私は怖いけど」



毎日毎日楽しいことばかり。
それに慣れてしまったら、そのうち楽しいことが楽しくなくなってしまいそうで怖い。

外の世界は楽しいことはほんの少し。
楽しいことに慣れてしまったら、もう外に出る気にはならないのではないか。


真面目な君らしい考え方だ。

「なるほど……」
それは、いいかもしれない。

楽園が、鍵がかけられていない檻だというのなら、君を楽園に連れて行きたい。
そうしたら君をそこにいつまでも閉じ込めておけるから。





────楽園

4/29/2024, 2:55:06 PM


「I miss you」




空が同じなら、きっと空気も同じ。
空気が同じということは、風もまた同じ。

この風が流れ、君の町に届くまでどれくらいかかるだろう。

声も気持ちも、そのまま届けられたらいいのに。

無機質な文字や電気信号を介したら、全部ちゃんと伝わらない気がする。
直に会って話しても、すべて伝わらないこともあるから。


「会いたい……」


零れ落ちる言葉と涙を、風が攫っていく。




────風に乗って

4/28/2024, 3:03:34 PM

「好きになってはいけないひと」


きっと好き。
好きかも。
たぶん好き。

そう思う時が短すぎて、自分でもわからなくなっていたのだろう。

どういう感情なのかわからないまま、瞬きするよりも短い時間に感じて積み上げてきたものを、分析して言語化することは難しい。


気がついた時には手遅れで、離れたくても離れられなくなっていた。


この関係を崩すことは出来ない。
気がつかなかったことにする、と決める。
たぶん、それが最善。



今あるものを壊したいと思ってしまうほど、好きになる前に。



────刹那

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