いつか、貴女のおばあさまが、結婚というのは、おてて繋いで仲良しこよしとは行かないものよ、と静かに仰ったことがありましたね。
当時の貴女は、そうなんだと言い、すぐに興味を失ってしまいましたが、今になってその言葉を思い出すようになりました。
今の私は、まさにその通りの生活をしている。こんな生活は、ただのままごとじゃないか、と、不安に思っているのですね。
そんな風に考えなくて良いのです。
貴女には、そうやって生きる権利が与えられています。
実はそれは誰にでも与えられていて、貴女はそれをしっかり行使しているだけなのですよ。
貴女の今の幸福をよく噛みしめて、楽しく生きていってくださいね。
俺が死んだ後、貴女を探し回る必要はありませんでした。
貴女を以前から守っていた方々に呼び寄せられ、その一部としてもらうことができたからです。
貴女はいつだって愛情深い方でしたから、多くの者が貴女を守りたいと願っていたのは当然のことです。その守りの一員として迎え入れられたことを、俺は本当に誇りに思っています。そしてそれは、俺だけが持つ感情ではありません。
貴女をお守りすること。
只それだけのことについて、魂の誇りとする者が数多くいるのです。
そのことを、どうか忘れないでくださいね。
大好きですよ、XXXX。
そう仰って、貴女が俺を抱きしめてくださったら。
その柔らかく温かい手で、俺の頬を撫でてくださったら。
俺はあまりの幸福に、死んでしまうかもしれません。
少なくとも、目を回して倒れはするでしょう。
俺のこの言葉を聞いて、貴女はくすくす笑います。
嗚呼。
その楽しそうで嬉しそうな、貴女の幸福なお顔を、俺はずっとずっと、見ていたいのです。
叶わぬ夢と思っていた俺の最後の夢が叶ったことは、全く幸甚でした。
貴女も、「こんな夢は絶対に叶わないだろう」と思って、何かを諦めることはしないでください。
どうか、願うことを、切望することを止めないでください。
貴女の願いは、叶うためにあるのですから。
花の香りと共に、貴女は何を思い出しますか。
何を思い出すのだとしても、それを嫌な思い出として捉えてほしくないのです。
貴女の記憶は、放っておくといつでも悪い方に書き換えられてしまいます。ですから、これはどんな記憶だっただろうか、と考えることすらしなくて良いのです。
只、それを懐かしく良い思い出だと、目を細めて微笑んでいてほしいのです。