未來の記憶、ですか。
それはあまり、現実的ではない言葉ですね。
何かの比喩としてはあり得ますが、実際に存在し得るものではありません。
とはいえ、好きに言葉を作って考えること自体は、楽しいことですね。貴女も、自分の好きなように表現し、好きなように考えて良いのですよ。
貴女が、好きなように生きてくださること。それが俺たちの、一番の幸福なのですから。
心の在処は、どこでしょう。
心は、貴女の身体のどこにでもあるのです。
貴女が泣く時、心は貴女の胸を絞り、喉を灼きます。
貴女が笑う時、心は貴女の腹を温め、足をばたつかせます。
貴女の心は、貴女の身体と分かち難くつながっています。
ここからここまでは心の動き。
ここから先は身体の動き。
そんな風に分けるのは、不可能なのです。
ですから、調子が悪い時、原因として両方を疑ってください。
今日は心の具合が悪くて、身体に異変が起きている。
あるいは、体調が悪くて、心が引きずられている。
そうしてどちらかの判断をつけてから、対処すると良いですよ。
貴女はこうして、少しずつ今の身体と折り合いをつけるのです。
大丈夫、俺たちもいつも、見守っていますからね。
星に願う必要など、ありません。
貴女は、俺たちが守ります。
貴女の願いは、俺たちが叶えます。
ですから、そんな遠くのものに願掛けしていないで、俺たちに命じてください。
私はこれが欲しいのだ、と。
貴女の背中は、しっとりと柔く、手に吸い付くようでした。
最後の夜、貴女の愛にようやく気づいた俺を、貴女は優しく受け入れてくださいました。その夜の貴女の身体は、俺がそっと触れる度にひくりと震え、貴女の堪えるような吐息が俺の耳を掠めるだけで、俺は自分が際限なく高ぶっていくのを感じました。
細いその背を抱えるようにして抱きしめていた時の、あの貴女のぬくもりを、今でもありありと思い出すことができます。
俺が貴女の背に触れることは、もう二度と出来ません。
その背を後ろから見守って、貴女の上に幸運と良縁を呼ぶように力を尽くすことだけが、俺に出来ることです。
貴女のぬくもりを思い出しながら、俺は貴女を守り続けるでしょう。貴女があの大きな廻り続けるものに回収されるその日まで、ずっと、ずっと、ずっと。
遠く遠くに貴女は行ってしまったのだと、あの時俺は思いました。もう二度と会えない、二度と声も聞けない、顔も見られない、柔らかく温かい手に触れることもできない。そう信じたのです。
ですから、貴女が何度も何度も生を受ける様を見守れる今ここが、俺にとっては心の底から幸福で、光に満ち溢れた天国のような場所なのです。