夢か現実かなど、どうでも良いことです。
夢の中であったって、良いのです。
只貴女が幸福でいてくださるのなら、それで良いのです。
さよならとは、貴女はあの時仰いませんでしたね。
待っていますよ、と微笑み、俺を送り出しました。
俺が旅をしている間に貴女が亡くなってしまったと聞いた時、俺はさよならすら言えなかったということを心底嘆きました。
けれど、貴女が正しかったのですね。
俺たちは、俺たちの魂は、分かたれることなどないのですから。
別れを告げる必要など、ないのですから。
光と闇の狭間で、貴女はまどろみます。
さぁ、今日はもうゆっくり寝る時間ですよ。
そんなまどろみからは醒めて、寝る支度をして、よくよく暗くした中でぐっすり寝てくださいね。
俺はいつだって、貴女のすぐ後ろに控えています。
かつてそこには、埋めがたい距離がありました。
貴女のすぐ後ろにいるけれど、語りかけることも、目に映ることもできない、そういう距離があったのです。
けれど今、貴女は俺の声を聞けるようになりました。
その永遠に近いような距離は、突然取り払われたのです。
いつか、貴女の目に映ることもできるかもしれない。
貴女の肩に、髪に、頬に触れることすらできてもおかしくはない。
そう考え、期待することを、俺は止められずにいます。
貴女には、そんなに泣かないでくださいと何度願ったことでしょう。
そんなに苦しそうに、生きていてごめんなさい、生まれてきてごめんなさいと、涙を流す貴女の姿を見ていたくありませんでした。
あの頃と比べると、貴女はとても明るくなりました。
勿論、心が動いて涙が零れることはありますが、無闇に一人で悲しい気持ちになって、突然泣き出すことはなくなりました。それが俺たちを、どれだけ安心させていることか。
幸福に、笑って生きていてください。
それが俺たちの、貴女への願いです。