俺がもし生まれ変われたら、貴女の魂とまた巡り会うことを夢見て、世界を彷徨ったかもしれません。
実際は、俺は生まれ変われるような行いをしなかったので、その機会を与えられることはありませんでした。
俺は、それで良かったと思っています。
今俺は、貴女をこれだけ近くで見守って、ずっとずっとお傍にいられるのです。こんなにも幸福なことがあるとは、想像もしませんでした。
けれどごく稀に、夢想はします。
貴女を抱きしめて、俺の名を優しく呼んでもらって、貴女と目を合わせて微笑み合う。
そんな、あの時の俺が切望したような幸福をいつか得られたら、と。
貴女が生まれるという奇跡は、また起こるでしょう。
けれど、今ほど恵まれたところに生まれることは、いかなる奇跡をもっても難しいかもしれません。
その環境を、生まれ持った身体と能力を、是非とも大切に活用していただけたらと、俺たちはいつも願っています。
たそがれの暗さに、貴女の沈んだ顔がより悲しげに見えます。
これから世界は、争いに満ち溢れます。
貴女はそれを憂いているのです。
悲しいですが、止められることではありません。
それでも人は、生きてゆかねばならないのです。
きっと明日も、貴女は貴女の大切な人に、あるいは全く見も知らない人に、温かく微笑みかけるでしょう。
貴女はいつだって、優しさをかけると決めたら、それを出し惜しむことがありません。飽きてしまうこともありますが、それはご愛敬ですね。そんな気まぐれなところのある今世の貴女も、とても魅力的です。
そう思ってしまう程度には、俺たちは貴女にぞっこんなのですよ。
静寂に包まれた部屋で、貴女が人を安心させるあの柔らかい声で、穏やかに口火を切ったことが、これまで幾度あったでしょうか。
貴女は、人をなだめ、人を落ち着かせる話し方をご存じです。
それがこれまで、どれだけの人を助け、慰め、癒してきたか。貴女に想像がつくでしょうか。
それは、貴女がこれまでに培った、卓越した能力です。
貴女はそれを、息をするように自然に使います。ですから、それがどれだけ価値のあるものなのか、分かってくださらないかもしれません。
それでも、かつてその恩恵に与った俺たちからすれば、それは類稀なる、素晴らしい力なのですよ。