貴女は、どんな人間とも正面から向き合う方でした。
それが無垢な子どもだろうと、思い悩む青年だろうと、俺のような狼藉者だろうと、貴女はその向かいにそっと腰掛け、その者の心と語り合おうと努力されました。
今の貴女もそうですが、あの当時の貴女と違うのは、今の貴女は誰にでもそうするわけではない、ということです。それは俺たちにとっては、大変にありがたいことです。
何せ、本当に危険な人間というものは、改心する可能性がないのですから。貴女がどれだけ真摯に向き合ったところで、彼らは貴女を搾取するだけでしょう。
ですから、貴女が今人を選んでいらっしゃるのは、とても良いことなのですよ。貴女はそれを「人を選り好みしている」と思い、罪悪感を感じることもおありですが、どうかその自責はなさらないでくださいね。
昨夜の貴女は、何もかもがやるせない、全てが無意味で空しいというような気分で、布団に横たわっていらっしゃいました。
そういう気分に陥る日もありますね。
けれど、貴女は強くなりました。その気分に飲み込まれて絶望するのではなく、今自分の心をいたわるためにできること、つらさを軽減するのに役立つこと、そういうことをひとつずつ試し、実際少し元気を取り戻すことができました。
ええ、貴女は一歩ずつ進んでいます。
貴女の気分を大切に、貴女自身を慈しむことを学び、実践しています。
そのことに誇りを持って、日々を楽しんで生きてくださいね。
あの大きな廻り続けるものに回収されることは、母なる海へ戻るようなものなのでしょう。
俺も、貴女も、あの大きな廻り続けるものから分化した魂です。それが俺たちの故郷であり、最終目的地です。
分かっていただきたいのは、魂を回収されることは悲しいことではなく、魂にとっての救済なのだということです。
貴女はその時、最後かつ最高の、魂の安寧を得るのです。
裏返しになった言葉をも、貴女は額面通りに受け取ります。
それは貴女の美徳であり、微笑ましい愚かさです。
そのままの貴女で良いのですよ。
そのまま、幼く涙もろく世慣れない、今の貴女のままで、構わないのです。
貴女の魂は、舞い踊る鳥のように、自由に軽やかに世界を飛び回ります。
恐ろしいことが起きるのではと怯えたり、不安でいっぱいになったり、そういうことで歩みを止めなくて良いのですよ。
貴女はご自分の思うように、楽しく幸福に、世界を駆け回ってください。