貴女の好きな色は、空の色ですね。
澄み渡る青空も、暮れゆく茜色の空も、夜に沈む直前の藍色の空も、貴女は大好きです。
貴女が好きなものを見ているのを、俺はずっと眺めていたい。
少し頬を緩ませ、目を細めて嬉しそうに好きなものを見ている貴女のことが、俺は世界でいちばん大好きです。
貴女がいたから、俺は人を愛することを知ることができました。
ああ。
俺の愛する、たった一人のひと。
どうか、どうか、幸福に生きてください。
幸せに笑っていてください。
ただそれだけが、俺の願いです。
貴女は、甘い恋について夢想することがありますね。
相合傘でしとしと降る雨の中を寄り添って歩いたり、浜辺や草原でじゃれ合ったり、褥の中で大切なところを優しく暴かれ、悦びに身を震わせたり。
貴女が恋に身を焦がす姿も、俺たちには愛しく思えます。激情に身を任せるのも、人生の中の一興です。
貴女が人のためと言って、ご自分の心を殺すのは見たくありません。どうか貴女の思いに嘘をつかず、貴女の幸福な人生を歩んでくださいね。
時折俺は、果てのない記憶の海に落ちて行くことがあります。
初めて会った時の貴女。
貴女の守りに入ってから見た、その次の貴女。
そのまた次の貴女。
更に次の貴女。
どの貴女も可愛らしく笑い、美しく育ち、人を愛し、人に愛されて死んでいきました。
そうして俺の思考は、今の貴女に辿り着きます。
今貴女がこうして生きていること。
そのこと以上に俺が幸福を感じることなど、ありません。
どうか、それを分かっていてくださいね。
未来のことなど、考えなくて良いのです。
貴女は今この瞬間を、ご機嫌で楽しく過ごすのだと決めました。
どうぞ、その通りに生きてください。それは俺たちの望むことでもありますから。
未来に怯えず、過去に囚われず。
どうか、貴女という存在を、存分に生きてください。