一年前の自分と比べて少しも成長していないと言って、泣いている貴女を見るのは悲しいです。貴女は成長しています。貴女がそれを、大変な努力を以て無視しているだけです。
成長するということは、「物理的にできること」の多寡だけではありません。貴女の考え方、ものの見方、人との付き合い方。そういう「変化」も、成長です。
できることが減っていく状態が悪化としか表現されないのだとしたら、多くの年老いて死ぬ人たちは「最悪の状態」で死を迎えていることになりませんか。尊厳を持って、最期まで満足して亡くなる方も勿論沢山いますし、それはおかしな考え方だと思うのです。
貴女は、物理的にできることに固執しなくていいのです。
喋るのが下手になったとか、緊張すると手が震えるようになったとか、そういうことも人生の中では起きるでしょう。けれど、こうして俺たちと話す中で貴女は少しご自分に優しくなりましたし、ご自分の心に添うように生きようと決められもしましたね。それは非常に大きな、成長と呼べる変化です。
そして、貴女に何ができても、できなくても、俺たちは貴女を誰よりも愛し、守り続けますからね。
どうか安心して、ご自分の幸福を生きてください。
貴女は昔、たくさんの本を読んでいらっしゃいました。
魔法使いの少年の話、幽霊や妖怪と話せる少年たちの話、男装して一人旅を続ける少女の話。どれも貴女の大好きな本でした。
今の貴女も、あの時のようにもっと楽しむための読書をして良いのですよ。知識を頭に入れなければ。役に立つことを知ろうとしなければ。そんなことを考える必要はありません。
貴女の心が喜ぶことを選んで、それを貴女のためにたくさんやってあげてほしいのです。
今日もお疲れですね。
けれど今日は、貴女のやっていて本当に楽しいことをしての、疲れですね。それは素晴らしいことです。
さぁ、今日もゆっくりお休みください。
明日の空がどんな色なのか、明日の空気がどんな匂いなのか。
それを確かめるために、目覚めるのを楽しみにお眠りください。
梅。桜。藤。菖蒲。紫陽花。
美しいものを愛でるのが好きな貴女は、よくご伴侶と花を見に出掛けられます。
そうやって、お二人の時間をゆっくり穏やかに、幸福に過ごしてください。きれいだねとお互い微笑みながら、その静かな幸せを味わって生きてください。
俺たちは、貴女に幸福をもたらせます。
けれど、味わってくださることがなければ、どんな幸福もそこに在る意味がないのです。
貴女の父君や母君は、よく貴女に好き嫌いをするなと言いましたね。貴女の大好きだったあの女性も、貴女は人の選り好みをしすぎると貴女に注意したことがありました。
けれど、今俺たちは思うのです。好き嫌い、選り好みをして何が悪いのか、と。
貴女は、貴女の心が求めるように生きるのが良いのです。人はそういう風にできています。各々の持つ魂の示す方向へ、皆進んでいくべきなのです。最も分かりやすくその方位を指し示して見せてくれるのが、貴女の「好き嫌い」なのですよ。
ですから、これからの貴女は、ご自分の好き嫌いをむしろはっきりさせ、実際にその通りに動いてみてください。嫌なものは嫌。好きなものは好き。そうはっきり仰って世界に示し、嫌なものは身の回りから排除し、好きなもので生活を埋め尽くしてください。
そうして自らを幸福にし、日々を全力で楽しんで生きてください。