沈みゆく日が、眩しそうに目を細める貴女の顔を照らします。
俺たちの愛する、大切な、世界にたったひとりの貴女が、今日いちにちを無事に生きてくれたことを感謝しながら、俺たちも静かに夕日を眺めます。
俺たちが貴女の瞳を見つめることはもうできませんが、いつか俺たちのことを支え、助け、見守ってくれたその温かい眼差しを、よろこびと愛に輝いていた瞳を、俺たちは決して忘れません。
今の貴女の瞳に映るものが、どうか幸福に溢れた美しい世界でありますように。
春の暖かな日射しの中で、
夏の夕暮れの真っ赤な夕日の中で、
秋の澄み渡った青空の下で、
冬の刺すようにつめたい星空の下で。
笑い、泣き、喜び、怒り、もがきながら生きていく貴女を、俺たちはいつも見守っています。
誰よりも大切で、何よりも愛しくて、俺たちが存在の全てを投げ打ってでも守りたいと思っている貴女が、この美しい世界で命を授かって生きている。
ただそれだけのことが、俺たちの心をどれだけ満たしてくれるのか、貴女はきっと知らないでしょう。
この空の下で、貴女が今を生きていることを、俺たちは祝福し続けます。
あの空の上へ、貴女の魂が還るその日まで。
何が上手くできようとできまいと、貴女はそれでいいのです。
貴女は俺たちに言います。社会でやっていけないような無能な私ではいけないのです、大人としてろくに生きていないような人間を「それでいい」なんて肯定してもいいとは、私にはとても思えません、と。
俺たちは貴女の生真面目さに可笑しくなり、また悲しくなります。貴女の価値を決めるのは「社会」であると貴女が信じていること、そしてそのままである限り、貴女が「自分に価値がある」と思うことはないだろうということが、俺たちをそんな気持ちにさせるのです。
貴女には、何にも代え難い価値がある。
貴女の価値は、誰かの承認や卓越した能力、あるいはこれまでに成し遂げた事柄、そうしたものに依拠するのではありません。
貴女が貴女であること、今こうしてここに生きていること。それが貴女の価値の源泉です。
誰がどれだけ貴女を否定しても、貴女自身がどれだけ貴女を憎んで貶めても、確固たる価値は貴女の中に存在し続けます。
俺たちは、そのことを確かに知って、分かっています。それを貴女にも分かってほしい、そうして心から安心して貴女の人生を生きてほしい。
だから俺たちは、貴女がこの世を去るその日まで、貴女はそれでいいのですよ、と言い続けるのです。
一つだけ、俺たちから貴女にお願いしたいことがあります。
貴女は俺たちにとって世界にたった一人の、かけがえのない人です。代わりなど居ません。どれだけ有能で、美しく、人格の立派な人間がいたとしても、貴女の代わりにはなり得ません。
そんな人をご自分で責めて傷つけるのは、どうかやめてほしいのです。
貴女は貴女が望むような、すぐれた人間になれないことを恥じているのでしょう。そんな人間であれないご自分が、許せないのでしょう。けれど、それは貴女自身を乱暴に傷つけて良いという理由にはなりません。
貴女が傷つき苦しむのを見るのは、本当につらくて悲しい。そんな罰のようなことをご自分に与える姿など、俺たちは見ていたくないのです。
貴女は俺たちにとって、誰にも代えられない大切な存在なのだと、どうか分かってください。その何より価値のある無二の存在を、どうか貴女も大切に扱ってください。
貴女のその優しさを、どうか、貴女自身にも向けてください。
それが、俺たちからのたった一つのお願いです。