白糸馨月

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3/19/2025, 3:53:56 AM

お題『大好き』

 あの子の気持ちが分からない。
 私に対して「大好き」と言うのと同じ口で別の子にも「大好き」と言う。
 あの子は人懐っこくてすぐに人にそういうことを言う。なんなら近くにいる人に誰彼構わず抱きつき始める。
 それを見るたび気が狂いそうになる。だけど、それを言ったら友達ではいられなくなってしまう。それがいやだ。
 だからせめて、あの子が「えへへ、大好きー」って言いながら抱きついてきた時、「はいはい」と言いながら頭をなでながら彼女をぎゅっと抱きしめることにする。
 そうしてひとときの独り占め気分を味わうのだ。

3/17/2025, 11:23:12 PM

お題『叶わぬ夢』

 いくらがんばっても、好きなことだけでは食べていけないことがある。
 たまたま当たれば売れるんだろうけど、そうじゃない場合、すくない稼ぎのなかでやりくりしないといけなくて、それがなかなか辛い。
 だから安定している仕事についてそこそこ生活できるくらいの給料を担保するのだ。
 そこで夢は叶わなかった、と区切りをつけてもいいが、どうしたって諦めきれず趣味としてほそぼそやるのもいいと思っている。続けることでもしかしたら叶わなかった夢に近づけるような気がするから。

3/17/2025, 3:56:36 AM

お題『花の香りと共に』

 花の香りとともに生活することに憧れている。だが、花の世話はずぼらだからつい忘れてしまう。
 おまけに一人で暮らしている部屋は今は服があちこちに散乱していて、掃除機とか面倒でかけていない。こんななかに花を置いておくのは可哀想。でも面倒なものは面倒なのだ。
 でも家に花が置いてあると、それだけで気分が良くなる。それに好きな花の匂いだとなおさら部屋がいい空間になりそうで、世話は大変そうだけど憧れている。

3/16/2025, 2:42:26 AM

お題『心のざわめき』

 友人が結婚すると聞いた時、心がざわついた。
 たしかに私くらいの年齢になると、結婚する人や子供を持つ人が増えていく。そのなかで私も彼女も現在付き合っている人がいなかったので、二人で今までどおり友人関係を続けていくものばかりだと思っていた。
「おめでとう!」
 とざわついている気持ちを表に出さないように精一杯お祝いした。普段頼まないワインまで頼んでそれはもう豪華に。
 でも、家に帰って一人になり、私一人だけが取り残されている気持ちになり今度は一人で缶チューハイを開けてやけ酒をすることにした。

3/15/2025, 2:03:29 AM

お題『君を探して』

 喧嘩して彼が出ていった。きっかけはささいなことだ。
 それが次第に口論に発展して、「もういい」と言って部屋を出ていった。
 最初はあんなやつとか、もう決別かとか思っていたのに時間が経つと彼のことが心配になってくる。
 時計は深夜0時を回ろうとしていた。
 僕は部屋を出て君を探すことにした。
 なんとなく行き先の検討はついている。近くの公園へ行くと、やはり彼がベンチに座って腰を丸めて俯いていた。
 僕は二つ分の缶コーヒーを買うと彼に近づいてあつい缶コーヒーを彼の髪に触れさせる。
「うわっ、あっつ!?」
 彼が顔を上げ、僕の顔を見ると気まずそうな顔をして俯いた。
「ここにいると思った」
 僕のそこ言葉に君は答えない。ふてくされるように視線をそらす。
 それを無視して僕は彼の隣に座った。
「……俺を探しに来たの? あんな喧嘩をしたのに」
「どうせ行くところないんでしょ」
 僕のその言葉に弱々しく彼は「うん」と返事した。その言い方がなんだかいじらしくなって僕は思わず微笑んだ。

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