お題『手のひらの宇宙』
万華鏡を作るワークショップに思わず参加した。客は私一人だ。
サンプルで飾られている万華鏡から見える景色がとても色鮮やかでいろんな表情が見えて綺麗だったから思わず見惚れていたら、それを作った作家に声をかけられたからだ。
私は好きな色の筒を選び、なかに入れるビーズや羽を選んだ。夜空の色を表現したいから青とか紺か、なんて思っていたら作家から「他の色もいれるときれいですよ」と言われて黄色やらピンク、赤紫も入れた。
あとはラメも入れて作家に筒の蓋を特別な接着材で閉める方法をレクチャーしてもらう。
そうしてできた青い万華鏡から見える景色は、まるで宇宙の向こう側にある銀河みたいだった。
作家からも「宇宙みたいですね」と言われて、私はとても嬉しくなった。
お題『風のいたずら』
このお題についての文章をちょうどドライヤーで髪を乾かしながら書いている。
ぱっと思いつくものが「風に吹かれたことでくそ上司の髪が実はカツラだった」とかそういうネタしか浮かばない。
そこで私はよりいいネタがないか、Geminiに頼ることにした。すると、「スカート」が出てきて
「貴方もなかなか俗っぽいわね」
と思わずクスっと笑ってしまった。
お題『透明な涙』
ついに見つけた。秘宝『透明な涙』
こういう時、怪盗よろしくトランプみたいに「今宵、透明な涙をいただきに参上する」みたいな予告状を出すのがかっこいいんだけど、そんな警備が強化されるようなバカな真似はしない。
あらかじめ警備員に変装した俺は人がいないことを確認し、透明な涙が飾られているガラスを破壊してそれを手にとってずらかる。
防犯ブザーが鳴らないのは俺があらかじめスイッチを切っておいたからだ。
宝を手にして走って走って走って、ようやく誰もいない海辺にたどりついて手のひらにある透明な涙を見つめる。
これは人魚が流した涙が宝石と化したものだ。無色透明、きらきら光る真珠みたいな形をした宝石。
昔、仲良くしてもらった人魚が持ち主の手先に囚われた時に流した涙の一粒だ。今、その人魚はもういない。陸に上がった後、干からびて砂になって崩れてしまった。
ようやくここまで来た。人魚のねーちゃんを家に帰すんだ。
「ようやく帰れるよ、ねーちゃん」
透明な涙を海水に浸ける。すると、それは溶けて海と同化する。ふと、俺の脳裏にねーちゃんの笑顔が浮かんで、俺は息をついた。
お題『あなたのもとへ』
昔、幼馴染が魔王の手先によって攫われた。なんでも彼女には強大な力があるんだって。
「今まで楽しかった、ありがとう」
と涙を浮かべながら、それでも笑おうとする彼女が軍団に引きずられるように連れて行かれたのが十年経った今でも忘れられない。
私は今、仲間と一緒に魔王と対峙している。ようやくここまでたどり着けたんだ。
私が見据える先は魔王じゃなくて、その後ろで鎖に巻かれている美女の姿だ。綺麗な彼女は魔王に力を吸われていてもうぐったりしている様子だった。
「よく来たな、無謀なる勇者よ」
と言う魔王の声を無視して私は
「助けに来たよ」
と言った。その瞬間、疲労しているはずの彼女が顔を上げる。
「いやだ、来ちゃだめだったのに」
「それでも貴方を助けに来たかったの」
泣く彼女に私は笑いかける。
この十年、彼女を救うためにどれだけ鍛錬を積んだだろうか。魔法の粗質がないからひたすら剣の腕を磨いた。
女であるこの身には限界があって、それでもそれなりに戦える術を身に着けてきたつもり。
仲間を引き連れて、ようやくここまで来れたんだ。
全部あなたのもとへ行くために。
私は剣を構え、魔王のもとへ走る。仲間の僧侶が速さをあげる魔法を使ってくれたから動きが早い。
彼女を救い出すため、私は低めに構えて魔王の足を切りつけた。
お題『そっと』
俺達は今、積み上げた細長いちいさな積み木の中の一つを手にとって、それを上に置くゲームをしている。要するにジェンガだ。
今、大分タワーからささえになる木が抜かれていって、だんだん抜くのが難しくなっていく。
それにこのゲームをやるとやけに緊張して、自分の番でもないくせに『そんな雑に抜いたら崩れるだろうが』とか、『そっとだぞ! そっと上に置くんだぞ!』という念を他にプレイしている三人の友人に視線で送ってしまう。
さて、俺の番が来た。
どこを抜いても難しそうで、タワーが揺れて見える。
その中から、きっとここを抜いても大丈夫だろうというところにあたりをつけ、震える手つきで積み木を抜こうとして、思わずカンッと大きく積み木をずらしてしまった。
「あっ」
と言ったときにはもう遅い。タワーはガラガラガラと音を立てて崩れていく。
友達がみんなでおおきな声で笑いながら「あーっ!」と言う。
「お前、オゴリな!」
と友人の一人が言い、そういえば負けた人はおごるというルールだったなぁと思い出して「うわぁー、くそぉー!」と思わず声を上げた。