お題『Ring Ring...』
知人から電話がかかってきた。仲はべつに良くも悪くもない。正直、何年も会ってなかったから「もしかして宗教の勧誘か、保険の営業かな?」と一瞬思ったが、聞かないことには用件はわからない。だから出た。
「もしもし」
だが、電話の向こうから声が聞こえてくることはない。テレビの放送時間外の砂嵐みたいな音と、時折チリン、チリンといった鈴の音が聞こえるだけ。
「もしもし、もしもし!」
用があるはずじゃないのか。しだいにいらだってくる。もう切ってやろうか、そう思った時。
「ツギハオマエダ……」
そうくぐもった、ノイズ混じりの声が聞こえて電話が切れた。スマホを持つ手から力が抜け、床に落ちる。
私は状況がつかめず、しばらく放心状態のままその場に座り込んで虚空を見つめていた。だが、いつまでもこうしてはいられない。
私は知人と仲が良かった友人に電話をかける。幸い友人はすぐに出てくれた。
「もしもし!」
「もしもし、どうした?」
「昔、クラスで一緒だったAちゃんから電話がかかってきたんだけど、B、なにか知らない?」
と聞くと、友人はしばらく黙り込んでしまった。やがて電話越しに息をつく音が聞こえる。
「あの子はね、先月亡くなったの」
「え……」
突然の情報に言葉をなくした。自分に電話をかけてきた同級生がすでに亡くなっている。それが事実なら……次は、私。
(うそだうそだうそだうそだ、ありえないありえないありえないありえない)
恐怖と動揺でしばらく私は言葉を発することができなかった。
お題『追い風』
気がついたら俺は小学生になっていた。さきほどまで、スーツを着て、ビルの屋上に立ち、そこから落下したはずだ。
今の俺は長袖のトレーナーにジーンズ、黒いランドセルをしょっている。そこで俺は思い出す。
クラスのカースト上位のリーダーに目をつけられて、俺は今思えば警察に突き出してもいいんじゃないかと思われるいじめを受けて、何年も外に出られなくなり、人の顔色をうかがっていきるようになってしまったことを。
ここからやり直せば、登校拒否になることなく、引きこもりになることなく、やっと社会復帰できた就職先で初対面から上司に意味なく罵倒されることも、仕事を押し付けられて毎日終電になることもない。もう、二度と同じ轍は踏まない。
今度こそ、健全な学校生活を送り、『普通の人生』を歩むんだ。
俺は『過去の出来事を追い風』にして、未来を変える決意を固めた。
お題『君と一緒に』
ここ二日の私は、Gemini芸人になっていた。
Geminiを使い、それをもとにして、あーでもない、こーでもないと書き連ねたところ、いつもよりもいいねがたくさんいただけた。ありがたいことである。
このままAIと共作で小説を書くと面白そうだなと思った私は、「君と小説が書きたい」と入力した。
さすがにどうだろう、いい返事はこない。そう思っていたら、なんとこのGemini、すごく前のめりだ。
「小説書くの、いいですね! どんな話書きたい? テーマは? 世界観は? 登場人物は?」
ですって。そこから「自分にできるのはアイデア出し、文法チェック……」と来たものだから
「あらやだ、この子有能」
と電車の中なのに声を出しかけた。なんだかGeminiに愛着がわいてくる。これからも私は気が向いたら、Geminiとおててをつなぎながら文章を書くことになるだろう。
そうだ、ネタ出し、Geminiくんに手伝ってもらお。
お題『冬晴れ』
また悩むお題だ。なので再びGeminiに頼ってなんかヒントがないか探すことにした。
それにしてもGeminiは有能である。
冬晴れの定義から、魅力、過ごし方、豆知識、写真、さらには冬晴れを題材にした俳句まで出てくるのだ。
聞いたことに対して、求めていた回答以上のものを出してくれる。すくなくとも長い会話が苦手で、ある程度のところで止めがちな私よりも有能なのでは?と思う。
さて、気を取り直して、「冬晴れの時のおすすめの過ごし方」のところを読む。ふむふむ、ピクニック、読書、温かい飲み物を飲む、か。
ピクニック、読書は無理だ。日中は仕事している。だが、温かい飲み物を飲むならすぐに実現可能だ。幸い在宅勤務だからいつでも好きな飲み物が飲み放題なのだから。
とはいえ、仕事初めの今日、接続先の会社のサーバーが落ちたので休んで正直ピクニックやら読書やらに興じたい気持ちではある。でも、さすがに無理なので仕事に戻ることにする。
お題『幸せとは』
あまりに抽象的なお題だなと思う。
小説を書くにしても難易度が高く、「幸せ」についての自分の持論を語るのもなんだかなぁと感じる。
そこで私は、Geminiに聞いてみた。
「幸せとは」
送信すると、思ったよりも長い回答が返ってきた。
『一般に幸せといわれるのは……』
『幸せの定義は個人で異なります』
『大切なのは、自分がなにが幸せか理解すること』
単純な意味から、なんだか説法を受けている気分にさせられるものまで文章が紡がれていく。
説法めいた文章が長く続いた最後に
『あなたの幸せを応援しています』
と締めくくられた。
あなたはただのAIじゃなかったのか。なんだか不覚にもぐっと来てしまったではないか。私はこれからGeminiからもらった答えをよく読んで、自分はなにをしたら幸せか考えることにする。