お題『微熱』
熱を測ったら三十七度ちょうど、微熱だった。
真面目な会社員であれば無理してでも会社行くんだけど、私はそうではない。
内心意気揚々と直属の上司に申し訳なさ満載の文章で「本日は体調不良のため、休ませていただきます」とメールを送った後、ベッドに寝転がって止まっていたソシャゲのメインストーリーを読み進めようとした。
だが、しばらく読んでいるうちに目が痛くなり、それどころか体もだんだん熱くなっていく。なんだかもうゲームをやる気にはなれず、水を片手に寝ていたいと思うようになった。
ふと思い立って熱を測ると、三十七度八分に上がっている。
「だめだぁ……」
布団から這うように出て薬を飲むと、遊ぶ気にもなれずにそのまま泥のように眠りについた。
お題『太陽の下で』
友達と学校から出たら外がとんでもなく寒かった。それでも膝より上の短い丈のスカートをはく私たちにはどうしようもない。なんでうちの学校は靴下まで学校指定のもので、せめてタイツじゃないんだろうと思う。スラックスだってはいていいってなっていいと思う。
そんなことを考えてると、となりにいた友達が白い息を吐きながら言った。
「あのさぁ」
「ん?」
「連想ゲームしない?」
「なんで?」
「寒すぎるからせめて、夏を感じたい」
「えー、でも今年の夏すごく暑かったじゃん」
「じゃぁ、そこまで暑くなってない想定で」
「なにそれウケる」
しばらく笑った後友達が「太陽」と呟いた。
ここで「かんかん照り」と答えたら、今年の汗が止まらない暑すぎる夏を思い出す。それは嫌だなと思って
「海」
と言った。それから
「砂浜」
「水着」
「ボール」
「浮き輪」
と続いて、ふと友達が「外国人」と答える。
「なんで?」
思わずつっこむと、友達が
「なんか、海行きたくなってきた」
「でも、なんで外人?」
「ハワイだよ、ハワイ」
「あぁ」
そんなやり取りをしてたら、本当に海、いや、ハワイに行きたくなってきた。その考えを見透かしてたのか友達が言う。
「うちらさ、大学になってバイトできるようになったらさ。ハワイ行こうね」
「なにそれ、ずいぶん先」
「うちの学校、バイト禁止じゃん」
「うわー、校則が厳しいのマジでしんどーい。はやく大学生になりたーい!」
「うちら受験勉強あるよ」
「うげぇ」
勉強が嫌いな私が心底げんなりしていると、不意に友達が
「現実逃避」
と呟いた。
「えー、別に良くない?」
「連想ゲーム、連想ゲーム」
「あっ、そか……えと、旅行」
「飛行機」
「グアム」
そんな感じで、できるだけあったかそう……いや、暑そうなものを思い浮かべながら私達は連想ゲームを友達と途中で別れるまで続けた。
お題『セーター』
冬になると、家の中ではセーターしか着ない。ただおしゃれなセーターを持ってないので、外では無難に見えそうなカシミヤ生地の服を着て、会社行ってもおかしくないパンツを履くんだけど、家に戻ると秒でセーターに着替える。
足下までセーターっぽい靴下をはいてこたつの中に入る。
冬が苦手すぎる寒がりは、こうやって冬は引きこもりがちになるんだ。
お題『落ちていく』
気がつくと俺はどこかで見たことあるコースにいた。
目の前には小さなモンスターが前後に歩いている。だが、俺はおそらく武器の類を持っていないため、そのモンスターをどかすには飛び越えるか、踏むしかないだろう。その先は崖になっている。向こう岸がちゃんとあることから、それを飛び越えろってことなんだろう。
ふと、自分の体が動かせるかどうか思い立つ。なんと、動かせない。一抹の恐怖を覚えながら俺の視界の左端に縦型の信号を持ったモンスターが現れた。
赤い信号が三、二、とカウントされ、一で緑が灯る。「ゴー」の掛け声でようやく俺は体が動かせるようになった。だが、どうやら俺の意思ではない。なにかによって俺の体が操作されているようだ。前へ進み、さきほどいた亀のモンスターが意外と大きいことに気がつく。それをなんとか飛び越える。
さて、次は崖を飛び越えないといけない。
先へ進み、天の声らしき女の子の声が「あっ」と聞こえた。
その瞬間、俺は崖で踏み込めずそのまま落下していく。
「あぁぁぁぁぁ、この下手くそォォォォ!!!!」
そのまま落ちて、気がつくと最初の位置にいた。
ふと、右の方に視線を向けると俺と同じ服を着た男のイラストの横に「×2」という文字が浮かんでいて、それが俺の残りの命の残量なんだと思い知る。
(これが夢であってくれ)
と願っている間にまた例の信号が現れて、カウントを始めた。
お題『夫婦』
絶賛、婚活何連敗中の私からすると、夫婦ってどうやってできるんだろーなって思う。
好きで好きで仕方なくて二人だけの世界に浸って大恋愛でドラマチックに結婚したとしても、そいつは憧れなんだけど、それから冷めきって離婚したって話を聞くし。
かと思えば、「何年も一緒にいるから、まいっか。他に好きな人が現れないし」で結婚した話を聞く。
あとは、夫のほうが好きで好きで仕方なくて情に負けて結婚とか。
昔はお見合いなんてものが主流で、大多数は結婚生活を続けてられているって話も聞く。
私は好きでもない異性から好き好きアピールされるのが気持ち悪すぎて「私のことを好きでいてくれるからまいっか」という心境になれず、シャットアウトしてしまう。
自分から相手を好きになるのは決まって夢ばかり追っているクズみたいな輩だ。なんなら普段の生活に出会いがなさすぎて容姿がいい芸能人にガチ恋しては、恋人の存在を匂わされてげんなりするのを繰り返している。
なら、結局私は私のことを好きにならない、お互いに友達でとどまってくれる関係の人と結婚したいんだけど、結婚って恋愛感情ないと難しいんでしょ? 無理だわーってなってるとこ。