白糸馨月

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11/17/2024, 1:41:12 AM

お題『はなればなれ』

 急に前世の記憶が蘇ってきた。
 ここはゲームの世界で、さきほど喧嘩したさっきまで相棒だった者とはこれきり離れ離れになって、俺の前に敵として現れ、殺さなくてはいけなくなるところまで見えた。
 そういえば俺はいつだって道を切り開いていたつもりだったけど、相棒にとってはそうじゃないのだろうか? 俺が自分勝手なだけなのか。あーもう、難しいことはよくわかんねぇ。今なら、そう遠くに行ってないはずだ。

 俺は来た道を戻って、相棒が進んだ方の分かれ道を進む。すると、やはりまだいた。一人で木に魔法で火をともしている。

「よぉ、こんなとこにいたのか」
「話しかけるな。もうお前と俺は関係ないはずだ」
「そんなこと言うなよ」

 そう言って俺は相棒の目の前に座る。しばしの沈黙が流れる。だが、耐えられなかった。きっと相棒もそうだろう。
 俺は鞘から剣を抜く、相棒は手から雷の魔法を放つ。魔法攻撃を剣で受け止め、俺は後ろに飛び退いた。

「うまい言葉が思いつかねぇからよぉ! やっぱ、こういう方法しか思いつかねぇんだわ!」
「奇遇だな、俺もだ」

 きっと離れたくないのはお互い様だ。でも、言葉じゃどうしたってうまく伝えられそうにない。だから俺たちは、殴り合うことに決めた。

11/16/2024, 3:08:49 AM

お題『子猫』

 いつからか友達が私のことを「子猫ちゃん」呼ばわりするようになった。
 なにに影響を受けたんだか。長かった髪を短く切って、金髪に染めて、宝塚みたいに前髪をあげたりしちゃって、ジャケットを着た男装っぽい見た目になってしまった。
 それで学校内では私の腰を抱きながら歩くようになった。まわりから「カップル?」だの「百合」だの言われて正直こちらとしては勘弁願いたいところだ。
 ある日の帰り道、友達に
「なんで男装しようと思った?」
 と聞いた。そしたら、私から目を逸らしながら「やりたくなっただけ」と言ってきた。
 それから更に数日が経って別の友達から「あの子、あなたに悪い虫がつかないようにって言ってたよ」と教えてもらった。
 そういえば、あの子が男装するようになったのは私がとなりの男子校の生徒に腕を引っ張られてどこかに連れて行かれそうになってからだ。

 いつものように「子猫ちゃん」と呼んでくる友達に
「いつも守ってくれてありがとね」
 と言うと、爽やかな王子様スマイルから一変、赤面して「べ、べつに……ってか聞いたの?」なんて言いながら顔をそらした。ちょっとツンデレないつもの友達だ。
 ちょっと距離をとる彼女に私は悪ふざけの流れで腕にしがみついた。

11/15/2024, 3:52:28 AM

お題『秋風』

 在宅勤務でたまにしか外に出ない生活をしていると、季節感がわからなくなる。
 最近まで半袖で問題なかったのが、長袖じゃないと寒すぎてしまって、でもコートを着ると逆に暑く感じてしまう中途半端な季節になってしまった。
 たまに外に出る時、着る服を間違えて寒い思いをしたり、しばらく歩いていると暑すぎる思いをしながら秋風に吹かれるのだ。

11/14/2024, 3:39:06 AM

お題『また会いましょう』

 婚活で最初に会ったとき、目の前の男はずっとにちゃにちゃした笑みを浮かべていた。不躾にこちらの姿をわかりやすく上から下まで首を動かしてスキャンしているのが丸わかりだ。
 それでカフェに行って席についたけど、向こうは喋らずずっとにやにやしたままこちらを見つめている。その空気が気まずくて、私はずっとしゃべり続けた。
 それからふと、会話が途切れたタイミングで彼がようやく口を開く。
「綺麗ですね。カーディガンに花がらの膝丈ワンピース、よくお似合いです」
 そして、デュフフフと笑い出した。
 キモい、キモすぎる。鳥肌が立った。
 私は一刻も早く帰りたかったが、彼はそれからもあまり言葉を返さず、彼から話を切り出すことなくニヤニヤしているだけ。どうにか話をつないで一時間くらい経った後に帰ろうって話になった。
「楽しかったです。また会いましょう」
 喋らない分際でにちゃにちゃしながらそう言う彼に
「あ、はい」
 とにこやかに返し、彼と別れ背を向けた瞬間表情を消した。
 気持ち悪い。あなたとだけはないわ。と心で返した。

11/13/2024, 3:57:18 AM

お題『スリル』

 推しは出るんじゃない、出すんだ
 職場の同僚がそんなことを言っていた。その時は、「あほみたいだなぁ」と思っていた。
 だけど、あるソシャゲに手を出して、推しができた瞬間に同僚が言っていた意味がわかった。
 推しは、絶対に欲しくなるのだ。
 だけど、私は無課金と決めている。ガチャを回すとき、「でろ、でろ、でろ」と課金するかしないかの瀬戸際を味わっているのだ。

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