白糸馨月

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お題『はなればなれ』

 急に前世の記憶が蘇ってきた。
 ここはゲームの世界で、さきほど喧嘩したさっきまで相棒だった者とはこれきり離れ離れになって、俺の前に敵として現れ、殺さなくてはいけなくなるところまで見えた。
 そういえば俺はいつだって道を切り開いていたつもりだったけど、相棒にとってはそうじゃないのだろうか? 俺が自分勝手なだけなのか。あーもう、難しいことはよくわかんねぇ。今なら、そう遠くに行ってないはずだ。

 俺は来た道を戻って、相棒が進んだ方の分かれ道を進む。すると、やはりまだいた。一人で木に魔法で火をともしている。

「よぉ、こんなとこにいたのか」
「話しかけるな。もうお前と俺は関係ないはずだ」
「そんなこと言うなよ」

 そう言って俺は相棒の目の前に座る。しばしの沈黙が流れる。だが、耐えられなかった。きっと相棒もそうだろう。
 俺は鞘から剣を抜く、相棒は手から雷の魔法を放つ。魔法攻撃を剣で受け止め、俺は後ろに飛び退いた。

「うまい言葉が思いつかねぇからよぉ! やっぱ、こういう方法しか思いつかねぇんだわ!」
「奇遇だな、俺もだ」

 きっと離れたくないのはお互い様だ。でも、言葉じゃどうしたってうまく伝えられそうにない。だから俺たちは、殴り合うことに決めた。

11/17/2024, 1:41:12 AM