大きな目から、堪えきれずに涙がぽろぽろとこぼれていく。綺麗だと思った。慰めるための言葉を一番最初にかけてあげる権利をきみからもらったのだと考えていたけど、まばたきの度にやわらかな曲線の上を流れては固く握られた手に落ちあっけなく散る涙に、目眩がしそうだった。きみの王子様は僕の役目ではないみたいだ。
// 星が溢れる
電気の消された部屋の中にエアコンの稼動音だけがあった。ほかに人のいない、静謐な空間に揺らぐ厚いカーテンの合間から、月明かりがちらちらと差し込む。岩陰から水面より上を夢見る気分だった。月が水面に落ちてまやかしてくれるように、どうか手の届くもののふりをしてはくれないだろうか。座り込んだ傍らに落ちた白い明かりに触れると、ひどくあわれな気分になった。
// 海の底
お互い誰かと付き合うまでは一緒に遊ぼうか、なんて楽しそうに笑ったあなたに心を奪われっぱなしなのに。知らない人の隣で笑うあなたを想像して、私はやけになって恋人を何度も作ったのに。勘違いでもいいから、聞きたくなるよ。何度もフラれる私を、何回もひとりで迎えてくれるあなたを見てると、
// どうして
「ほんとに食べてもいいと思う?」道端に追いやられた、何年かぶりに積もったそれが陽を浴びてちらちら光っているのを見つめていると、私と同じようにしゃがみ込んで見ていた友人がそんなことを言った。友人へ顔を向けると至極真面目そうにこちらを見ている。うん、なるほど。「ラーメンでも食べに行こうか」
// 雪
暗闇をおそろしいと思ったことはなかった。何もない所から生まれるものはないと知っていたからだ。ひとりで生きることに疑問を抱いたことはなかった。最初からわたしはひとりなのだから。いつの日からかわたしの手を取るあなたがいた。ふたりは陽だまりの中にいた。何もない所から生まれるものはないはずだった。暗闇はふたりを知ったわたしに孤独を教えたようだ。
// 寂しさ