電気の消された部屋の中にエアコンの稼動音だけがあった。ほかに人のいない、静謐な空間に揺らぐ厚いカーテンの合間から、月明かりがちらちらと差し込む。岩陰から水面より上を夢見る気分だった。月が水面に落ちてまやかしてくれるように、どうか手の届くもののふりをしてはくれないだろうか。座り込んだ傍らに落ちた白い明かりに触れると、ひどくあわれな気分になった。// 海の底
1/20/2023, 8:25:31 PM