『空を見上げて心に浮かんだこと』
ファフロツキーズ。魚や蛙が空から降ってくる怪雨のことで、竜巻が海から巻き上げて遠い土地まで持ってくるらしいよ。旧約聖書では天罰の一つで蛙を降らせるけど、アメリカの諺では絶対起きないって意味で「蛙が降る」って言葉がある。つまり、絶対起きないって油断してることも条件次第で発生する。
別に悲劇に浸って自己憐憫してるわけじゃないんだけど、そう見えたならそうだって話。生きるの下手ってわかってるから、良い顔しながら来るもの拒まず応じてたら迷い込んでた袋小路で。人間相手に好きも嫌いもありはしないし、心は慣れてて無視できるって思ってたら、身体は軋んで無理するなって壊れただけ。
自分のことを大切にしろって話ならその通り過ぎて言葉もないけど、蛙に備えて傘を指す人はいないと思うし、蛙だって自分が空飛ぶなんて思わないでしょ。ただそれまでの私にとって、蛙ってのは中身を知るため解剖するものでキスする相手と気づいてなかったって、空にふっ飛ばされて知ったけど。
『終わりにしよう』
おいおい、どうした?
哀しいことでもあったのか?
今更投げ出すとはお前らしくもない!
よしよし、私が慰めてやろう。
なに、誰彼構わず優しそうな相手の言葉に摺り寄って、
美味いとこだけつまみ食い。
良いじゃないか!
本質的にはそれこそ賢い生き方だ。
そうだと知ってて粗末な扱いがお好みなのだろう?
ああ。そうだな、
お前には私がいるもんなぁ、…フフッ!
馬鹿な奴だと思っていた
太ってないのに痩せたがるから食わせたし、
休めば良いのに働くから頑張らせた
他人の言葉を区別なく有難がって後生大事に味わい続け、一人で立ってるつもりになって屍どもを支えにしてる
気味の悪い趣味だがどうも本気で尊重してる
何がしたくてそんなに自分を蔑ろにしてるんだ?
何が欲しくてそんなに頑なに全部を明け渡すんだ?
もう一度頭を治してもらった方が良いんじゃないか?
繰り人形は楽だろうが誰も求めてない舞台を踊るのに
心の支えが欲しいんだろ、嗤えるなぁ
ああ。…呼んだか?
『手を取り合って』
『優越感、劣等感』
自分は人より劣ってるんだって周囲の扱い見てればわかる。何かができてもそれは当然。できないくせに努力もしないしできるくせに努力もしない。謙虚じゃない素直じゃない頭が悪い可愛くない。直接的な罵詈雑言ならいっぱい言われた。大事な何かが劣ってるんだと叩き込まれた。容姿や態度や能力なんて実はたいした問題じゃなく、重要なのは好き嫌い?そんな疑い、いつものこと。
お前はいつも可愛いな。お前はいつも頑張ってる。お前の料理はいつも美味いな。お前が健康なら何でもいい。あなたと居ると、私は何にも劣ってないって気持ちになった。あなたの言葉は何気なくて、疑いきれずに救われた。気づいたときには遅かったけど、薄々わかっていたんだよ。私が欲しがる優越感を、あなたはただくれただけ。劣ってるんだと教え込まれるほどに育てた、私はそれだけ優れてるんだとしがみついた承認欲を、あなたは麻酔みたいに肯定しただけ。ただそれだけなんだって。
『これまでずっと』
彼は執着心が強いから、
こうなるだろうと思っていた。
適当に遊ばれておけば良いものを。
恋を煽ってその気にさせたのなら、
すべての自由を支配されてもお互い様だな。
やると言ったらやる男だ。
依存させたら辛いだろうと言いながら、
心配をさせないためなら共依存にも突き落とす。
望み通りに叶ったのだ、
良かったな。
私は彼より嫉妬深い。
お前が望むならいくらでも、
不幸になるのを見守ろう。