LINEなぁ…
いつも軽いやりとりで
あっちの都合だけで来るから
こちらも待つしかしなかった
面白くないからゆっくり会話を引き延ばしてたんだ
仕事も頼んで修正作業をひたすらやらせた
それがある日音沙汰すらなくなったから
慌ててルールを捻じ曲げた
あっちからの『1件のLINE』を貰うために
その、なんだ
かなり本気で探り出して、越境したな
連絡は知ってる手段で何度も送った
家にも行って話も聞いた
前と同じで飯が食えなくて眠れもしてないってな
それで思ったんだが、
理由、…これじゃないか?
夢をあんまり見ないんだよね。眠りに落ちたら3秒後には朝が来てる。寝付きがいいわけじゃないけど眠りの質は深いみたいでちょっとやそっとじゃ目覚めない。
たぶんね、あれは小さく死んでるの。眠ることは死に似てるってダ・ヴィンチも言ってた。どっかの古代の死生観じゃ眠ることは毎日死んで蘇るって扱いらしいし。夢を通って毎日魂は浄化されて生まれ直すんだって。現代の脳科学じゃ夢は記憶の整理の一環らしいから古代人の洞察力こわ〜って話。
うつし世はゆめ、よるの夢こそまことは乱歩の言葉。私はたまに現世は目覚めるたびに反転する鏡みたいな世界だと思うの。昨日は全部間違いで、だから今日はそれを正して生きてく日に回転する。毎日毎日幻みたいで正解はない。夜の夢が真だ浄化だ記憶の整理だっていうのなら、夢を見ない私にはなんにもないってことになる。
だから私は頑張って、起きてるときに夢を見る。眠ってしまうと消える夢を『目が覚めると』映る夢にしたい。幻みたいな日々の中で「確かに、あった」と抱えた記憶。夜の夢に頼らずに二度と消えない血肉にしたいの。
自分にとっての当たり前を、
自らこれだと披露できるなら
それは随分と殊勝なことだ。
よほどの知見の持ち主か、
大海を必要としない幼い蛙か。
自ら編んだ縄に縛られ水面近くを綱渡り、
沈んだ者を嘲笑っては己の縄を締め付け直す。
他人に縄を歩かれて初めて気付く欺瞞の異質さ。
どうせなら縄で縛って動けなくして
這い上がれないほど深く沈めば、
誰に悲鳴を聞かれることも無く、
これが『私の当たり前』だと胸を張って生きただろうに。
中から見る『街の明かり』は煩いかもな
わたしは夜でも賑やかな方が好きだが
静かな方が好きならそうする
夜が深まって賑わいが枯れた頃合いに
祭りの後のそぞろ歩きのような背とすれ違う
白んだ明かりで固体と群れの区別が揺らぐ
そうして眠る街の姿は心地良い
抱え込まれた命の数なんて見なくていいんだ
所詮は遠く眼下で尽きる、他人の燈花だ
『七夕』
昔は織姫にあやかって裁縫の上達を願ってたんだって。月明かりで針に糸を通せたら器用になれるって。それ、もう器用だよね。去年の今頃、私が趣味の刺し子を見せたとき、訳知り顔で七夕だなって言ってた意味はわかったよ。たまたま五色の糸で錦鯉を縫ってたせいでもあるけど。なんかね、浦島太郎と七夕伝説は同じ日の説話で中身も似てるんだって。天を渡って人間と天女が出会って夫婦になれても離れたら最後もう会えないとか。年に一度会えるだけ七夕の方がマシらしいけど。
気にするなとか何でもないとか知らなくて良いとか。謎謎みたいに話を進められてもわかんないまま進まないといけないの。だって一度だけでも手が届くならって騙されて、喉元過ぎると楽しかった思い出にまた騙される。
だから、お話を知っても夜空を見上げて星を探したりはしてないや。天の川はわかるけど夏の大三角形すらわからないし。昔はどの星まで見えるかで視力検査をしたっていうね。私は私の視力が悪いのか地上の灯りが煩いのかも、もうわかんないな。