『繊細な花』
日本画とか植物画とかの緻密で優美な流線形で描かれた花ってどうしてあんなに繊細なんだろうね。花が持つ生命の輝きとか理知的な自然美とかを丁寧に追いかけて写し取った創作物。その作業自体が繊細だからなんだろうけど、筆致に浮かぶ速さや遅さに息を飲む集中力を感じた気分になるからなのかな。
目の前にある実物の花だってとても綺麗で美しいけど、可憐とか繊細って言われると作品になった花って思う。実物の花ってけっこうしぶとくて頑丈で力強いのに、絵の花ってどこか幽微で儚い恐さが加わるものが多いよね。誰かの繊細さが真綿のように息を塞いで、死んだ何かを一緒に塗り込めちゃうのかもしれないけれど。
『1年後』
丁度先頃漬けた梅酒が飲み頃になる時期だろうな。
放っておいても時の方から迎えに来てくれるのだ。
急いで出迎えることもない。
正しく今日を過去にして、昨日のようでも遠い昔のようでもない等しい時を歩んで辿り着けば良い。
そのうちに甘い記憶は溶けて消え、酸味と苦味を含んだ酒は熟して琥珀と成るだろう。
待てば良いのだ。
『子供の頃は』
不要な情報だ
なんでも掘り起こせば良いってもんでもないだろ
…たいして変わらん
間違いなく、私は日常を取り戻してる。
食事はちゃんとできてるし夜になったら眠れてる。文字も読めるし映画だって観れる。起きて着替えて仕事して帰宅したら料理してご飯食べてお風呂入ってまた眠りについて。少しだけ欠けた、ただの日常を繰り返せてる。
とても満たされていて、いつも少しだけ淋しいから、まだ愛おしいけど、それだってあと一ヶ月もすれば消えてなくなる思い出にする。ただ健康でただ幸せな、あなたが望む『日常』を生きる。
『好きな色』
何色でも良いだろう。
何色でも美しい。
敢えてと言うなら光の色か。
色の全てを含んでいるのに、
選んだ色しか孵してくれぬ。
見せたい色しか見せてはくれない。
奥ゆかしくも狡猾だ。
私は良いと思う。