『あなたがいたから』
そうだな…楽しかったぞ
騒がしかったが賑やかだった
無遠慮だったが率直だった
本心から好ましいと思っていた
だからだ
道を外れてここまで来るな
全部忘れて別の場所で幸せになれ
わたしはそういう未来が欲しいな
『相合傘』
先週ね、晴れた日に青年同士で一つの日傘に入ってるのを見かけてなるほどなぁって。
雨の相傘ってだいたいどっちも濡れるじゃない?仲が良ければ肩が濡れた背中が濡れたとうるさいし、微妙な仲だと離れて濡れるし、身長差があったら気遣った方が多く濡れるし。雨がしのげれば十分なのに、お互い何かを譲り合って奪い合って濡れた量だけ疲労する。二人だけの空間にきちんと収まっていればね、許し合って認め合って相合わさって歩けるのかもね。そんなこと思うたびに、俺はいいからお前が使えって走り出したトトロのカンタの思い切りを素晴らしいなって思ってた。
だから、一つの日傘で和やかに歩く二人を見て、誰も濡れない相合傘に感心しちゃった。これから夏の日差しが強くなれば結局日陰の奪い合いなのかもしれないけど、穏やかな晴天を相合傘で歩けることはとても素敵な光景だった。
芽吹いた生命は、その瞬間から落下を始める。
落ちていくため天まで昇る。
下へと引きずる力を借りて、遠く高くを浮かぶのだ。
枝葉末節恐れず飛んで、宙を揺蕩う花と成れ。
お前を襲う大気も熱も届かぬくらいに舞い上がり、
丸みに沿ってゆっくり素早く、堕ちてこい。
私はお前を見守ろう。
いつかは花散り燃え尽きるまでな。
『落下』
『未来』
まだ見ぬ未来の責任が、過去の自分にあると思うか?
いずれはそうなると見越した未来があるとして、
その途上を歩む現在は、未来が創り出したのか?
それとも安易な過去の積み重ねが描かせたのか?
その途上を行くわたしは、いつその未来に届くんだ?
有限の話なら時は既に収束し、わたしは今や未来の先にいる
無限の話ならアキレスと亀、辿り着くことは決してない
『1年前』
代わり映えがなさすぎて覚えてない、と言いたいけど結構私が違ってるかな。
1年前は毎日1分1秒が進むのをただ待ってた。通院してて。薬飲んでて。それで頭と一緒に時間も止まってて。何も記憶に残らない生活してた。それまでは言われた罵倒を毎日毎日反芻しては謝罪して、それをぐるぐる繰り返す、やっぱり記憶に残らない生活してた。
それが薬で嘘みたいに静かになって。だけど同時に知ってた言葉とか知識とか記憶の形状とかも頭から出てこなくなった。目に映ったものが何をしてるのかも頭に入ってこなくなった。代わりに心は凪いで穏やかになって微笑むのは簡単になった。人は、それを喜んでくれた。
可笑しいよね、心を直すために頭壊すんだって知って。それまでの全部、誰も要らなかったんだって知って。私が世界を捨てたのは確か今頃だったと思う。