『誰にも言えない秘密』
あるぞ
そうでなければ、こんなことには付き合わない
本当は部屋じゃない空間を『狭い部屋』だって言い張るのって悪くない提案だと思うの。クローゼットの中とか押入れの中とか階段の下とか。だって子どもの頃に憧れた部屋は小さくって狭くってどこか秘密に満ちてる場所にあったから。狭いところにいると落ち着くような気がするし、外界から遮断された密室の中に機能的に配置された私物がぎゅっと詰まってるのは、それだけで集中と選択を感じさせて格好良さに溢れてると思うんだよ。
…とはいえ、私はもうそういう空間には長く留まれないとは思うけどね。たぶん息が、難しくなる。
ああ。
やはり、どう伝えても野暮だろう。
私もお前に『失恋』するのは慣れている。
その度に、お前を愛しく想うのだ。
いつかお前の恋を止めたら、
そのとき、お前は私のものか?
嘘が必要なときは正直に事実を話せばいい
正しく素直に味方であれば、
わたしの嘘は許容される
偽りや誤魔化しを求められているのなら、
わたしの事実が嘘とされる
人間なんて大抵の場合は信じたいことしか聞いてない
何に対して『正直』なのか、
それを決めるのはわたしではないからな
『梅雨』
肌に纏わりつくべっとりとした湿度。ねっとりと垂れ下がる曇天と立ち籠める地面の匂いに囲まれた蒸し風呂のような結界空間。あの暑さと不快さの多重攻撃は体力を根こそぎ奪って消耗戦を挑んでくる。
それでね、北海道に梅雨はないって聞いて、祝日のない6月の週末を使って北へと逃げたことがあるの。快適な避暑地へ。そしたらさ、寒いの。とても寒いの。半袖でいられないくらい冷たくて、しかも乾いた外気の中をしとしと雨が降ってるの。リラ冷えっていうんだってグーグル先生が。北海道はライラックの咲く時期に梅雨が来て気温を一気に下げるんだって。フランス語でライラックをリラっていうって。へー、これがそのリラかぁって有名な大通り公園歩いて、すすきののニッカ看板ちょっと眺めて、あるんじゃん梅雨って。週末の間ずっと暗く冷たい雨の中を厚手のパーカー着てちょっと泣きそうな気分で彷徨って帰ったの。
空港降りて、じっとりとしたあの気持ち悪い熱気が出迎えてくれて、これこれ!こういうのでいいんだよ!って。だけど3日もしたらそんなわけないだろ!って。
またそんな季節が来るんだねー…