紫小灰蝶

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11/20/2023, 1:13:56 PM

宝物

それはあなたと過ごした日々。
離れ離れでも毎日電話した時間。
雑踏の中、待ち合わせした駅であなたを探した瞬間。
一分一秒と短くても会うたびにワクワクした感情や思いが、
今の宝物。

11/20/2023, 3:21:53 AM

スナッファーの傘が黄金に光る。
ゆっくりと上げた後、蝋燭に灯る火が揺らめいた。
フードの人物は不気味な目を細めて、石畳みの床に靴音を響かせる。

巨大な棚に押し込まれたように並べられた蝋燭を、フードの人物たちが一本ずつ確認している。

空いている箇所に新たな蝋燭を立て、点いた火を吹き消さないように慎重に見てまわる。

短くなった蝋燭には十字架を手に、スナッファーを被せて消火する。

それが彼ら灯火を管理する者の仕事。

11/18/2023, 7:48:42 PM

今でも思い出すよ。
君と駆け回った芝生公園。

短い足で走る君は楽しそうに笑顔を弾けさせていたね。

いなくなった今でも色褪せることなく思い出せるよ。

11/18/2023, 9:36:55 AM

冬になったら近所の川に鴨がやってくる。
そこそこ大きく育った鴨たちだ。
ほとんどが地味な見た目をしているから雌だろう。

冷たい風が綺麗とは言い難い水面を走る。
上着のポケットに両手を突っ込むくらい寒いのに、平然と泳ぐ彼女たちに負けたような気がした。

私は時間の許す限り観察してみた。

まるまるとした体にちょこんと乗せた小さな顔。
靴ベラのようにつるっとしてそうなくちばし。
尻尾を振りながら歩く様子はどこか愛くるしさを感じる。

羽を広げて手入れしているので、身だしなみもバッチリだ。

ズボラな私とは大違い。

橋の上から彼女たちを眺めていたら、踏切の音が聞こえる。
そろそろ電車が来るころだ。

私は間に合うように走りだした。

また明日、鴨たちに会える期待を抱いて。