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11/18/2024, 1:57:38 PM

 夏休みが明けて、教室に入って、席に座って、窓の方を向いて白百合に挨拶したとき、もう貴女は居ないんだと気がついたんだよ。

 いつも通りを気取りながら、スマホの写真フォルダを遡ろうか。私は写真が得意じゃないけれど、貴女との日常を忘れたくなくて、貴女と見た景色を撮ったんだ。
 それから私は、写真を撮ることが日課になって、写真を撮る意味も増えたんだよ。私の日常を、貴女と共有したかったんだ。私のスマホを覗き込む貴女の、淡くとろけた瞳を、撮れればよかったのに。

 白飛びした海に、ピントの合わない向日葵に、ブレた屋台の光。それを撮っているとき、貴女はいつも隣で笑っていて、だから私は、それを通して隣の貴女を見ているの。

 チャイムが鳴る前にと、カメラを起動して、いつもよりざわめく教室をうつせば、白百合が笑ったような気がした。


『たくさんの想い出』
2024/11/18

6/14/2024, 12:00:23 PM

 授業の終わりと昼休みの始まりを告げるチャイムが、未だ鳴り続けるチョークの音と共に耳に入ってくる。
溜息は口の中で噛み、目線を窓へと移動する。晴れても曇ってもいない空に対した用はなかったが、そう言えば、委員会を共にするあの先輩は、こんな空を好きだと言っていた気がする。
 あの先輩は、今日の空も好きだと言うだろうか。先輩は、他に何が好きなのだろうか。私は、先輩のことを思っていたよりも知らないのかもしれない。クラスも知らない。けれど、他の委員会の先輩より、だいぶ仲が良いはずだ。そんないまの関係は、今の空に似ている。
部活仲間より仲良くなくて、クラスメイトより知らなくて、でも、委員会の中では一番。そんな曖昧な、ともだち?
 ぼんやりとしていた世界から、わっと大声を上げて現実に弾き戻したのは、まさに今考えていた先輩で、高鳴る鼓動を大声に結びつけて、文句を口にする。ふわりと笑い、くせ毛をまとめた三つ編みを揺らす先輩は、委員会の事で私を呼んでいたようだった。
 教室を出て、笑い声に溢れる廊下を2人歩いていく。ふと、横を見てうつった空に。

 あぁ、明日は晴れると良いな。
                 あいまいな空