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 夏休みが明けて、教室に入って、席に座って、窓の方を向いて白百合に挨拶したとき、もう貴女は居ないんだと気がついたんだよ。

 いつも通りを気取りながら、スマホの写真フォルダを遡ろうか。私は写真が得意じゃないけれど、貴女との日常を忘れたくなくて、貴女と見た景色を撮ったんだ。
 それから私は、写真を撮ることが日課になって、写真を撮る意味も増えたんだよ。私の日常を、貴女と共有したかったんだ。私のスマホを覗き込む貴女の、淡くとろけた瞳を、撮れればよかったのに。

 白飛びした海に、ピントの合わない向日葵に、ブレた屋台の光。それを撮っているとき、貴女はいつも隣で笑っていて、だから私は、それを通して隣の貴女を見ているの。

 チャイムが鳴る前にと、カメラを起動して、いつもよりざわめく教室をうつせば、白百合が笑ったような気がした。


『たくさんの想い出』
2024/11/18

11/18/2024, 1:57:38 PM