しょめ。

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8/16/2024, 2:10:15 PM

【 No.2 誇らしさ 】


私は自分に誇りを持てない、弱い人間。
弱い人間は、強い人間に喰われて、どんどん呑み込まれ、結局嫌な思いをする。
でも弱い自分が悪いから、と、強い人間を責められない。

「弱いから自信ない?」

そう聞かれたことがあった。
私の答えはもちろん、一切の迷いのない「はい」だ。

「じゃあ、いいこと教えてあげる。弱い人間は強い人間に
喰われる辛さを知ってるから、優しくできるんだよ。」

そんな綺麗事が刺さるはずもなかった。
けど、彼はきっとそれを分かってた。

「覚えてるかな、あの時のこと。」

夕焼け色に染った空に、独り言葉を投げる。
あの綺麗事は刺さらなかったけど、こんな自分に声をかけて励まそうとしてくれた彼の優しさは、温かかった。

「……好きだな、そーいうとこが。」

優しく温かい貴方の事は誇らしく思ってるよ。
そんな彼に選んで貰えた今の自分のこともね。

8/15/2024, 5:08:20 PM

【 No.1 夜の海 】


暑苦しい祭りから抜けだして、海辺に出た。
なんか駆け落ちみたいでテンション上がるね、
なんて言ってはにかむ君。
柔らかく、儚く、少し乱暴すると消えてしまいそうで、
怖くて。自分でも驚くほど優しく、頬に手を添える。
長い髪が潮風になびいて美しい。
潮の匂いと共に鼻をかすめる香水の匂いに満たされて
思わず緩む顔を、君はクスリと笑って好きだと言った。
その行動全てにまた惹かれ、愛おしくみえる。

「俺さ、今日を記念日にしたいんだ。」

俺たちが出会った特別な日だから。

「俺と結婚して下さい。」
「喜んで。」

少し頬を赤らめて、一筋の涙を頬に伝わせた君は
嬉しそうに笑って目を閉じた。
俺は彼女に軽く啄むようなキスをした。

夜空に咲いた華やかな光の花が、俺たちの影を真っ暗な夜の海に映した。
どんなに静かな夜の海であっても、君と一緒なら特等席。
肩を寄せ合い見上げた空を、俺達は一生忘れないだろう。