【 No.1 夜の海 】
暑苦しい祭りから抜けだして、海辺に出た。
なんか駆け落ちみたいでテンション上がるね、
なんて言ってはにかむ君。
柔らかく、儚く、少し乱暴すると消えてしまいそうで、
怖くて。自分でも驚くほど優しく、頬に手を添える。
長い髪が潮風になびいて美しい。
潮の匂いと共に鼻をかすめる香水の匂いに満たされて
思わず緩む顔を、君はクスリと笑って好きだと言った。
その行動全てにまた惹かれ、愛おしくみえる。
「俺さ、今日を記念日にしたいんだ。」
俺たちが出会った特別な日だから。
「俺と結婚して下さい。」
「喜んで。」
少し頬を赤らめて、一筋の涙を頬に伝わせた君は
嬉しそうに笑って目を閉じた。
俺は彼女に軽く啄むようなキスをした。
夜空に咲いた華やかな光の花が、俺たちの影を真っ暗な夜の海に映した。
どんなに静かな夜の海であっても、君と一緒なら特等席。
肩を寄せ合い見上げた空を、俺達は一生忘れないだろう。
8/15/2024, 5:08:20 PM