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3/31/2025, 10:02:30 AM


棲家を探す綿毛
墓を探す花弁
相手を探す花粉
終わりを探す雲
君を探す声

‹春風とともに›


泣いただけ強くなれる、なんて
ならば何故絶望は人を殺せるのか
結局のところ生涯泣かない人が
血も涙も無いような人こそが結局
どうしたってこの世界で強いくせに

‹涙›


それはいつだって飴の形をしていた
お使いの後のご褒美も
注射の帰りの労いも
兄弟と分け合う笑顔も
海を渡り来たお土産も
いつも小さな飴の形をしていた
夢に惑わせる視線も
絶えず撫で這う触覚も
絶望を掬う神紛いも
深く深く堕ちる眠りすら
飴の形をしていた
硬く煌めく宝石の

‹小さな幸せ›

3/28/2025, 10:07:52 AM

「春の色と言えば?」
「桜のピンク」
「芽吹きの緑」
「晴天の薄青」
「たんぽぽの黄色」
「スミレの紫」
「式典の黒」
「つくしの茶色」
「リボンの赤」

「そうね、意外とカラフルね」

‹春爛漫›


虹のイメージで選んだのと
染まる爪先の整列
足りなくないかと問えば
7つじゃない国もあると
そんなものかと思って
ある日思い出し調べてみて
なんだあの子は嫌いな色を
抜いただけじゃないかと言えば
好きな色だけにしたで良いじゃないと
言葉を裏返しカードを捨てた

‹七色›

3/26/2025, 9:18:20 AM

『本当』はどんな顔で
どんな声音で雰囲気で
【正確】には何と言い
何を伝えたのかなんてそんなの
頭蓋を開けて覗いたところで
脳味噌開いて探ったところで
そんなの分かりゃしないのさ

‹記憶›

3/24/2025, 1:21:30 PM

前世で会ったこともないし
来世もきっと会えないけど
だから今世は楽しくいよう
忘れることを惜しむほどに

‹もう二度と›


白く泡立つ蒼天に
並々波立つ灰の群
空駆く光は見えるだろうか
それとも遠く流れていくか
窓の向こうの自然を想う
絶対安全な観察室

‹雲り›

3/23/2025, 6:34:08 AM

さようなら、と手を振った
君は焼けて来なかった
また明日、と手を振った
君は轢かれて来なかった
行ってくる、と手を振った
君は刺されて来なかった
絶対戻る、と手を振った
君は飛んで戻らなかった
いかないで、と手を掴んだ
君は困ったように笑った
君は起きて来なかった

‹bye bye…›


二人駆け回った原っぱは
大きな建物が立ちました
お墓を作った木は無くなって
タイムカプセルを埋めた場所は
高い高い塀の向こう

二人で隠した秘密基地は
誰かのお家になりました
夏を掴まえた川は無くなって
地図に隠した宝の在り処は
遠い遠い山の向こう

二人歩いた町並みは
今はどれももうありません
天の国にはあるでしょうか
君はまだ見ているでしょうか
遥か遥か空の向こう
待っていてくれるでしょうか

‹君と見た景色›


一緒に飛び降りたけど
墜ちた場所が違う
一緒に飲んだけど
毒になるものが違う
一緒に吊ったけど
体の重さが違う
一緒に一緒にいきたいけど
どうしても君をおいてしまう

‹手を繋いで›

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