Open App
8/2/2024, 11:53:24 PM

昔の病院は何処もかしこも真っ白で、
それは清潔感の証明だったという
やがて清潔に慣れ白に慣れ、
すると逆に虚無や消失が連想され、
パステルの柔らかさを、
アイボリーの優しさを、
白の上に装うようになった

けれども人は慣れていく
明るい色も温かい色も
落ち着いた色も穏やかな色も
慣れて慣れて慣れてしまって
装いは次々色を変えて

胎内みたいな真っ赤な部屋で
下手物みたいに真っ青な流動食
一つの汚れも分からない真っ黒な医師が
サイケデリックに輝く薬を出す

でもこれはずっと変わらないのだよなと
銀色を刺す痛みに目を閉じた

‹病室›

8/2/2024, 8:56:23 AM

「明日はきっと青空だから」
「あの日みたいに海に行こう」
「君と揃いの服を着て」
「新しいサンダルを履いて」
「瓶に手紙も詰めてさ」
「そうして、そうして、今度はちゃんと」
「ちゃんと、一緒にかえろうね」


‹明日、もし晴れたら›

7/31/2024, 10:45:23 AM

友と語らう時、
共有の楽しみと我儘の忍耐を得る。
家族と過ごす時、
習慣の平穏とレッテルの束縛感を得る。
好意を差し出される時、
想われることの喜びと変化への苦しみを得る。

大概の物事は二律背反で
大体の関係は苦楽混合で
その中で
誰と別れ、誰と出会い、
誰と対立し、誰と寄り添い
誰とどの時を生きていくのかを選んで行く。

ならば、私が選ぶなら
誰と共に居る平和より
誰と共に暮す安寧より
大切を喪う絶望を、心の底から捨てられるならば

‹だから、一人でいたい。›

7/30/2024, 12:25:33 PM

透明な眼差しがひとつ瞬いて
ふぁとやわらかくたわむ
伸ばした手を確かに追って尚
へたりと座り込む四肢は動かない
「……ごめんね。やっぱり、嘘ついた」
両の手で握り込む首筋
気道が歪み血管が高らかに
それでも尚それでも尚
ぶら下がる掌が打つことも
投げ出された脚が蹴り上げることも
歯をむき出して放つ悪辣も
解かれて程涸れて
全て認識しない瞳ばかりが美しい
「生きてるだけ、じゃぁなんにもならないね」
平和に揺れるうたかたに
心ばかり平穏と程遠く

‹澄んだ瞳›


風が奪い取り
雨が撃ち付け
雷が焼き貫き
闇が駆り立て

荒れ狂う自然を
容赦無い破壊を
僅か明るいだけの窓から覗く時

青く晴れ渡る空と同じ程
白く吹き荒ぶ雪と同じ程
染まり欠ける月と同じ程

私の胸は高鳴り
鼻歌も出るほどの歓びを覚えている

‹嵐が来ようとも›

7/28/2024, 11:52:22 AM

提灯ほわりきらきらと
月も星も無い空に
駆ける下駄の音崩れる衣ずれ
きゃらきゃらの声に負けず賑やかに
兄さんが笑って
姉さんがはしゃいで
あの子が回って
その子が頬張って
彼が指をさして
彼女が選んで
君と手を繋いで
 は一緒に

一晩で子供は消えました

‹お祭り›

Next