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7/12/2024, 2:05:52 PM

ぽん、と通知。
『海に行かない?』
先週は山
昨年は滝
アクティブなことで、とポップアップを消す
「なぁ明日どうする」
「あっちのゲーセンに例の出たらしいぞ」
「まじかぁ」
「あ、俺もそれ行って良い?」
「めっずらし、別にいいけど」
問い掛けばかりのメッセージ欄を閉じる
誰も相手の居ないメッセージ欄を閉じる
毎夏のこととはいえ
何処の何に気に入られたんだか

‹1件のLINE›

7/10/2024, 10:42:09 AM

目を開けたら

知らない天井だったとか
身体が小さくなっていたとか
未来の滅んだ世界だったとか
動物になっていたとか
空中浮遊真っ逆様だったとか

そんな朝を夢想する
そんな明日を懸想する

誰も呪いたくなかったから

‹目が覚めると›

7/9/2024, 1:15:57 PM

私にとっての当然が
他人にとって地域差の光景であるかもしれないように

誰かにとっての普通が
他人にとって世代間のズレであるかもしれないように

お前の賢しらに語る常識とやらは
どの範囲で『常』に『識』られていることなのか
お前が嘲り嗤う非常識とやらは
ただお前だけが『常』に『非ズ』な立場でないか
考えてから言え
定めてから口に出せ

それすら出来ないなら
その口二度と開くな痴れ者が

‹私の当たり前›

7/9/2024, 7:44:09 AM

「100万ドルの夜景って言葉あるけどさ、
 あれって『そのくらい美しい』じゃなくて
 『その時間にそれだけ働いて稼いでる人達が
 灯している照明だ』って解釈があるんだって」
「一周回って切ねえ話だな。
 ……じゃあ、あの明るさは何の稼ぎも
 出してないからって0円の夜景になんの」
「……いや、あれは美しいの方の100万ドルの
 解釈にしとこう」
「命の儚さ美しさって?」
「そうそれ」

‹街の灯り›


曇天の下では緑もどこか元気がなく、
色鮮やかな笹飾りを手慰みに量産するばかり。
「今頃雲の向こうでいちゃついてんだろ」
「まあいんじゃね。逢瀬なんて見られたくも
 見たくも無かろ」
「それはそう」
午前の一雨でぐしゃぐしゃに流れた短冊の文字
わずかに残った線をなぞって、瞬く。
「……なに」
「いや、お前これさ」
耳元に囁いた『願い事』に、あんまりに勢いよく
もんどり打ったものだから。
思わず噎せる程に笑いながら手を差し出した。
「星経由じゃなくて直で言えよ、こういうのは」

‹七夕›

7/7/2024, 9:15:31 AM

昔、私が子供だった頃。
一時期だけ遊んでいた友人がいた。
その子は物知りで、そのくせ最近のことは
よく知らない子だった。
だからこそ、初めにその子が未来人なんだと
そっと打ち明けられた時に笑った覚えがある。
その子は色々な未来を語ったけど
全て夢物語じみていて
その子は色々な過去を語ったけど
どれも私達の知る歴史とは違ったから。
何よりその時私達の生きていた
その時代のことを何も当てられなかったから。

その子はいつしか居なくなり
私もやがて大人になった。
夢物語じみた進化を遂げた世界で
間違いの全てが正しく修正された世界で
遠足に行く我が子を見送る。
あの時の子によく似た子供を
これからタイムマシンに乗る子供を。
あの、何一つ正しいモノが無いと証明された
私が子供だった時代の時間へと。

‹友だちの思い出›


今はどうだか知らないが
わたしが子供の頃は
恐竜絶滅の一説に
隕石というのがあった
図鑑の挿絵にあったそれは
大抵昼間の景色に火球の降る
コミカルに見えて相当に
恐ろしいだろう光景で

でもあるいは
そうあるいは
それが夜の景色だったなら
もしかすると
それはたいそう美しい
流星雨に見蕩れて絶命できたのかもと

‹星空›

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