「100万ドルの夜景って言葉あるけどさ、
あれって『そのくらい美しい』じゃなくて
『その時間にそれだけ働いて稼いでる人達が
灯している照明だ』って解釈があるんだって」
「一周回って切ねえ話だな。
……じゃあ、あの明るさは何の稼ぎも
出してないからって0円の夜景になんの」
「……いや、あれは美しいの方の100万ドルの
解釈にしとこう」
「命の儚さ美しさって?」
「そうそれ」
‹街の灯り›
曇天の下では緑もどこか元気がなく、
色鮮やかな笹飾りを手慰みに量産するばかり。
「今頃雲の向こうでいちゃついてんだろ」
「まあいんじゃね。逢瀬なんて見られたくも
見たくも無かろ」
「それはそう」
午前の一雨でぐしゃぐしゃに流れた短冊の文字
わずかに残った線をなぞって、瞬く。
「……なに」
「いや、お前これさ」
耳元に囁いた『願い事』に、あんまりに勢いよく
もんどり打ったものだから。
思わず噎せる程に笑いながら手を差し出した。
「星経由じゃなくて直で言えよ、こういうのは」
‹七夕›
7/9/2024, 7:44:09 AM