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5/20/2024, 11:00:40 AM

たとえば生まれた時からそばにいて
同じ家で同じ部屋で過ごして
同じものを食べて同じ経験をして
同じように当たり前のように
二人成長して大人になって
なんだかんだ死の際まで隣にいれたら

なんて

別に嘘でもなかったけれど

あなたがそれで幸せになれないのなら
そんな約束投げてしまってほしかった

あなたに幸せになってほしかった
ただそれだけだったのに

<理想のあなた>


知ってるかい 知ってるかい
エレベーターで喧嘩しちゃいけないよ

知ってるさ 知ってるさ
狭いとこの喧嘩は大迷惑だ

知ってるかい 知ってるかい
相手を残して出ちゃいけないよ

知ってるさ 知ってるさ
捨て台詞で逃げられちゃうんだ

知ってるかい 知ってるかい
今はそうでもないそうだが
吊る紐が切れて 吊り紐が切れて
箱ごと真っ逆さま御陀仏と

知ってるさ 知ってるさ
だから此処から出られない
ごめんなさいも言えないのさ

<突然の別れ>

5/18/2024, 11:48:47 AM

「物語。そう、物語だったのよ」
「魔王がいて怪物がいて、勇者がいて魔女がいて」
「サンタもおばけもいて、宇宙人も未来人もいて」
「でも、現実にいると信じられていないでしょう」
「全部空想の、想像の産物だったでしょう」
「だからおんなじだと思ってたのよ」

「誰かを恋して愛するなんて」
「ただの物語上、よくあるだけの設定だと」
「嫉妬、執着、依存や崇拝の体の良い言い換え、
 あるいはただの夢物語の憧れだと」
「そう思っておかしくないでしょう」

「だから、ごめんなさいね」
「きっととても喜ぶべき言葉だったんでしょうけど」
「その気持ちを私は返せない」
「ーーーその感情を、私は一生知り得ない」

<恋物語>


例えば善い子が眠りに就いた後
例えば短針が頂点を廻った時
あるいは草木もすっかり眠る頃
あるいは空の色が変わる直前

一番誰も見てない時間
悪いことの代名詞

それでも確かに誰かを救う
優しい闇の覆う時

<真夜中>

5/17/2024, 9:06:28 AM

愛していたのでしょう、と声がする
今でも愛しているよ、と声を返す
ならばどうして、と声がする
怨めしくはないの、と声がする
今こそ復讐を、と、
声を断つ

それは一番しちゃいけないこと、と呟く

世界の為に誰かの愛を刈ったのだから
これまでずっとそうだったのだから

それは一番してはいけないこと
己の愛の為に世界を歪めるのは
この身が最も許されないこと
決して許してはいけないこと

<愛があれば何でもできる?>

5/16/2024, 9:45:18 AM

プレイリストの更新が止まっていた
おすすめばかり集めた趣味じゃないリストだった
絆創膏はいつしかコンビニからのになっていた
教科書もノートも全部自分の名前のものだけ
鞄に在中のお菓子は何時まで経っても減らないし
見に行った家はいつの間にか空っぽだった
忙しなく前後する足音も煩く視界を横切る手も
打てば響くような喧嘩腰じみた声も
あれだけ隣で喧しかった存在感も
呼んだ名前に返事が無いことも

あの日から当然となった全ての事を
当然じゃなかった筈の全ての事を

視線が空を切る度思い出す
けれど瞬く度に忘れ戻る

きっと最期の最後まで
共に居れると思っていた

<後悔>

5/15/2024, 9:17:23 AM

「お待たせ、危ないよ」
「大丈夫、早かったな」
風の吹き抜ける屋上
夕日に煌と舞う黒が眩しく
俯きがちに歩いた先で
からころと笑い声が降る
「後どのくらいだった?」
「一時間くらい」
「本当に案外早かったんだな」
「此処まで来て優先順序は間違えないよ」
「どうだか。手紙忘れてきたりしてないか」
「元々用意するつもりなかったし」
「………そーか」
疾うに既に意味の無いそんなのもの
けれどその右手にひらひら踊る白い紙
「……案外、意外」
「笑えよ一寸感傷に浸ったんだわ」
「笑わないよ、良いんじゃない」
赤い日差しが墜ちてくる
煌々と灼々と墜ちてくる
眼下は忙しなく騒々しく
不気味な程に静まり返り
ただ戦々恐々侃々諤々
大地が太陽に墜ちてゆくのを
ーーー待たないと、二人で決めた
「じゃあ、そろそろ行くか」
「そうだね。またいつか」
靴は脱がずに柵の外
最後の握手は酷く熱く
からりとした笑顔と共に
溶け爛れる風へ足を踏み出した

<風に身をまかせ>

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