「ほらほら、もっと寄ってってば」
「いやそのカメラで全員収めるの無理ゲーだろ!」
「此方腕ちょうだい、前列で組めばなんとか」
「ちょっと背景になってくるな!」
「いや顔認識出来なかったらアウトだからな?!」
「膝載せろ膝」
「もー!時間無いんだよー!」
「行ける行ける誰かシャッター!!」
「……ああ、良かった」
「まだ、皆の事、思い出せるね」
「一緒に、生きられるね 」
<これからも、ずっと>
ふうわりと赤い頬
緩く細められた目元
一音目の為に開かれた唇の後ろ、
緋く朱く熟れた果実が
熔ける如く潰れていく
<沈む夕日>
熾火のようだ、と思った。
触れれば柔らかく崩れそうで、そのくせ、
触れたもの全てを熱し溶かす、静かな炎。
何れ程覗き込もうと揺るぎもしない色を、
瞬きもしない乾いた瞳を、
そっと、そうっと、どうか、
どうか火傷よ残れよと、
触れた肌は凍えるようで。
燃えていてくれと乞い願った命の炎は、
ずっと、ずっと、静かなまま。
<君の目を見つめると>
透き通るような白い肌
指先が示す金の軌跡
織り重なる暗色のマント
きらきらと歌う銀紗
くるくるひらひら踊る君は
夜空を纏う天使様のようで
一人だけのステージも
一人のためだけのステージも
此世を忘るるほど
星灯りだけの伴奏に
言葉呼吸も忘るるほど
<星空の下で>
「それ『で』じゃなくて、それ『が』にしてよ」
「……?大差ないだろ」
「またもー……大有りなの!」
「ふーん。了解、善処する」
「……確かに言ったけどさあ」
「ーーー何でまだ此処に居るんだ?」
「見送り。君が出たらすぐ行くよ」
「なら良いが」
「本当に、これで良かったの?今ならまだ」
「これ『が』良い」
「……そっか」
<それでいい>
「無人島に?……また、ベタな質問だな」
「ベタだからこそだろこういうのは」
「そんなもんか?…じゃあ日本列島」
「人の手で持てるモノに限る」
「大陸移動巨人説」
「訂正、お前の手で持てるモノに限るな」
「めんど……じゃあお前」
「俺?……十月十日で3kg弱はタイパが悪すぎないか?」
「そこまで人道に悖ることせんわ。大体ソレ元より十二分に母体の食事無いと成立せんだろ」
「それはそう。じゃあアダムとイブごっこでもすんの」
「クソ不毛過ぎて草」
「他何か利点無いだろー?」
「一緒に死ぬならお前が良い」
「いや生きろ?」
<1つだけ>
第2ボタンがお守りになるのは、心臓に近いから。
それはあくまで学生服の話。ブレザーでは遠い訳で。
半分騙し討ちで取られてしまったネクタイに、
泣きそうになる君に。跪いて手を差し出した。
あんな紛い物でなくたって、ずっとずっと遠い昔に。
本物の心臓を捧げたのに足りないというのだから。
私の姫様は本当に、欲張りが過ぎて可愛らしい。
<大切なもの>
おはよう、と呼び掛けた前の席。
振り返った瞳はきらきらと興奮に輝いていて、
何かと思う前にスマホの画面を押し付けられた。
「凄くない?!まさかの新衣装なんだけど!」
「近い近い近い落ち着け」
「こっちもさ!今日だけミニキャラ別ゲでさ!」
「分かった分かった席に着け頼むから」
押しやった肩、それでも尚オーバーランゲージと共に心弾ませる声が心地よくて。
会話のために席を寄せ
ーーーどうして、四月一日に、俺達は学校にいる?
「……良いじゃん、日が落ちる迄の嘘の日さ」
着潰した制服に花を飾って。
金の日差しに照らされた微笑みを。
ーーーどうして、涙が出そうになるのか。
<エイプリルフール>