「結局さ、通貨って同文化圏内でのサービス引換券な訳じゃん」
「急にどしたの」
「ほら彼処のケチ坊主」
「あ?あー……恨まれ過ぎてて駄目だねぇアレ」
「地獄の沙汰も金次第、とか。せめて地獄の通貨持ってきてから言ってほしいわ」
「それ一回地獄渡りしろと同意ー…。まあ、だから救済措置に善行とか感謝とか祈りとか数えるのにねぇ」
「割と露骨に伝えてる筈なんだけど、もっと分かりやすくないと駄目なのか?つら」
「うーわお仕事お疲れ。ハグる?」
「ハグらせてマジ」
「本っ当お疲れ様じゃない…。おいでおいで、転生まで頑張ろーね」
「がんばる……」
<お金より大事なこと>
「夜道に気を付けろって脅し文句有るじゃん」
「あるねぇ」
「何で明るい日が前提なんだろ?」
「相手から見えないけど、相手も見つからないからじゃない?」
「そっかー。真っ暗な日にやってくれたら狩りやすいのになぁ」
「そうだねぇ」
「其処の君に言ってるんだよ」
<月夜>
あまり良い意味ではなかったんだよ、
指同士を繋ぐ色糸を辿って彼は言う。
人を結ぶ暖かさじゃなく、
家畜を繋ぐ綱だったのだと、
糸の先の私に言う。
貴方と私、畜生はどっちだったのかしら
分かっていて私は問う。
随分と高評価なんだね、
溜め息を付くように貴方は答える。
赤とは反対色の糸に繋がる、
貴方と私の定めを嗤う。
<絆>
ハイネックのシンプルワンピ
マキシ丈のスカートと幅広ベルト
帽子とネイルはお揃いデザイン
警察も好奇の目線も知ったことか
反物の色もモチーフも全部計算ずくに
現代の着物スタイル、最前線は此処なのだ!
<たまには>
「それ俺に聞く?」
「何か色々意味出てきてややこしい」
「あー……取り敢えず、まあまあ一発でヤバイの以外はあんま気にしなくて良いと思うぞ」
「一発?」
「明らかにクソ高い奴とか、指輪とかリボンとか」
「装飾も駄目なんだ?」
「違う違う『プレわた』って奴」
「……………リアルにいるの?」
「居るんだわコレが……」
「こわ……戸締まりしとこ……」
「素直に菓子とかで良いんじゃねえの」
「マシュマロは『嫌い』って知って泣いた」
「多分商売のアレだから深く気にするな……」
「で」
「良いのかコレで」
「良いんだよコレで」
「いや好きなモン選べるのは良いっちゃ良いんだが」
「何だよもっと喜べよデートだよ」
「……成程確かに」
<大好きな君に>
出先で見かけた赤い雛壇に足を止めた。
私の家に飾られていたのは最上段の二人だけだったから、二桁に届いていそうな大きく豪華なそれが珍しかったのだ。
「三人官女と五人囃子と……赤い方が右大臣だっけ」
人形達の細かな役職も飾られた道具の意味も、今となってはほとんど忘れてしまったが。案外3番くらいまで思い出せた歌をなぞって顔を覗き込む。
「……単純に、『綺麗な人』って意味だと思ってたんだけどね」
官女の真っ白な顔に、『お嫁に入らした姉様』の苦労を忍ぶなど。そんな大人の哀しみを、赤い夕日と共に背負い歩き出した。
<ひなまつり>