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1/9/2024, 10:19:37 AM

そう言えば、君の描く月はいつもそうだった。

なぞる指先、黒鉛の色。白む程に薄い黒。

「あの人は、夜空にはよく三日月を描いていた」
「でもね、いっつも逆向きに描いていたよ」
「昔はなんとなく、今は手癖が過ぎてどっちか分からなくなっちゃったんだって」
「だからね、君がこれを三日月の絵と呼ぶのなら」

「『君』は『あの人』ではないんだね」


<三日月>

1/9/2024, 10:04:17 AM

綺麗でしょう、と君が笑った。
綺麗だね、と僕も返した。

ひらひら散っていく花弁を惜しむこと無く、
くるくる舞う足元は一つとて同じもの無く。

白い肌を裂いて咲き誇る花畑を、
一つも明かされなかった花言葉を。
僕達は口にすること無く、
ただ拒絶した別離と共に、
『今』の美しさだけを享受する。


<色とりどり>