そう言えば、君の描く月はいつもそうだった。なぞる指先、黒鉛の色。白む程に薄い黒。「あの人は、夜空にはよく三日月を描いていた」「でもね、いっつも逆向きに描いていたよ」「昔はなんとなく、今は手癖が過ぎてどっちか分からなくなっちゃったんだって」「だからね、君がこれを三日月の絵と呼ぶのなら」「『君』は『あの人』ではないんだね」<三日月>
1/9/2024, 10:19:37 AM