・キャンドル
可愛いと言いながら火を点けて、つい先程まで愛でてたソレが溶けていく様を綺麗と見つめ、己のせいで醜く変わり果てたその姿をゴミと呼ぶ。
これを人間相手にしても許されるのが今の世の中。
・たくさんの想い出
生きていく上で楽しいことや面白い想い出は増えて欲しいと思っていたけれど、結局最後は全部嫌な思い出に変わってしまったから、それなら最初から何も無い方がマシだった。
これ以上足を引っ張る想い出はもう要らない。
だからこれから先は何も起きないでいてほしい。
想い出に残ることはない毎日だけが私のところに来て欲しい。
自分だけが辛くなる想い出なんかもうたくさんだ。
・また会いましょう
カメラロールを見直すとまだ貴方がそばに居たあの日々が綺麗に残ったままでいる。
もう新しい写真が増えることは無いけれど、それでも貴方はまだここに居てくれる。
私が消さない限り写真の貴方はずっと私に微笑んでくれる。
いつか本当にお別れしなきゃいけないけれど、今はまだ私の傍にいてくれるあの人をこの中では大事にさせていてほしい。
・飛べない翼
君の背中には目を奪われるほどの立派な羽が大きく広がっていた。
あの大きさなら、きっと1人で何処へでも行けてしまうんだろう。
なのに何でこんな所にずっと佇んでいるのか。
君にはもっと相応しい場所があるのに。
そんな僕の内に湧き出た疑問を知ってか知らずか、彼女はただ何も言わずに静かに微笑むだけだった。
・脳裏
いま起きていることじゃない。
いま目の前にいる訳じゃない。
いま言われたことじゃない。
それなのに今現在もその場で起きているような気がして身動きが取れない。
もう終わった事なのに、自分の中では今もずっと続いて終わりそうにない。
なんで何一つ忘れられないんだ。
誰か頭を殴って欲しい。誰か脳みそを溶かして欲しい。
もう全部忘れたいんだ。