・鏡の中の自分
見つめないと会えない"私"。
目を逸らしたら会えない"私"。
視界に入らない限り会えない"私"。
もし私が見てないうちに私以外の姿になってたらどうしよう。
それとも、もともと私以外の姿で、私が見た時だけ"私"になってくれるのかしら。
だとしたらこの鏡は相当"私"の事が好きなのね。
もちろん私も、私が大好きよ。
・理想郷
例えば、君と並んで歩くこと。
綺麗な声で名前を呼ばれること。
その可愛らしい手を握って見つめ合うこと。
皆からしたらこれらは子供じみたささやかな願いに聞こえるかもしれない。
でも俺にとってこの願いが何よりも叶えたい大事な夢なんだ。
たとえ一生叶わなかったとしても、こんな願いを持つことが許されなかったとしても、叶ってほしいと祈ることはどうか許してほしい。
ああ、でも。
もしこんな幼稚な願いが君にバレて、いつものように笑われてしまったら、それはそれで心が満たされてしまうんだろうなぁ。
・懐かしく思うこと
妹が私のくだらない話で息が出来なくなるほど笑ってるあの瞬間、私たちは子供に戻ったんじゃないかと錯覚する。
あの時から私たちは変わってない。
今も昔も似たようなやり取りをし続けている。
それなのにこの瞬間を「懐かしい」と感じてしまうのは、私が、昔の自分と今の自分は違うものだと認識しているからだろう。
それでも傍から見れば私たちは何一つ変わっていないのだから不思議なものである。
・暗がりの中で
自身の手さえ見えないほどの闇の中、どれがボクでどれがボクじゃないのか何も分からない夜の中、潜むように静かに歩いているキミを見つけた。
闇夜に消えてしまいそうな、それでいて何よりも暖かく輝いてるキミが僕にとってどうしようもなく眩しかったんだ。
いつかその輝きを手にすることが出来たなら、きっとボクもキミのようになれるのかな。
・紅茶の香り
君が着けてた甘酸っぱい紅茶の香水。
今ならあれが本物の紅茶とは似ても似つかない香りだと言うことはよく分かる。
それでも僕にとっての紅茶の香りは、甘くて可愛らしくてなのにどこか儚げな香りなんだと印象付けられてしまった。
いい加減こんな記憶を無くしてしまいたい僕は、本物の紅茶で上書きするように今日もストレートティーを頼む。
それでもどこか物足りなさと違和感を覚えてしまう僕を、いつまでも消えてくれない思い出が小馬鹿にしてくるのだった。