異雪

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10/8/2025, 2:31:49 PM

・愛する、それ故に

仕方ないんだよ。
痛いのも、苦しいのも、どう頑張っても全ては拭いきれないものだから。
どれだけ泣いても、喚いても、暴れても、0になってくれないから。

だから力を抜いて。泣かないで。
俺の目を見て。その手を離して。
爪を立てないで。叫ばないで。
抗わないで。逆らわないで。

俺が君から与えられる全てを受け入れるように、君も俺の全てを受け入れて。
俺が君のせいで生まれる感情を全て受け止めるように、君も俺のせいで生まれる感情を全て受け止めて。
そうすれば痛みも苦しみも少しずつ薄れて、慣れて、忘れていくはずだから。

だから全部諦めて。
全部認めて。全部受け入れて。
俺がこうなってしまった事も、
君しか見えなくなってしまった事も、
もう何もかも手遅れな事も、
全部、全部、仕方の無い事だから。

9/16/2025, 1:33:31 PM

・答えは、まだ

分からなかった。
なんで貴方が私に怒ったのか。
私が私を雑に扱うことなんて、私にとってよくある事なのに。私にとって日常の1つなのに。
それなのに貴方は私に怒った。
"もっと自分を大事にしなさい"って。

「でも、私が私を大事にしてたら、もっと価値のある人の邪魔になっちゃうし……だったら自分より他人を優先したいよ」
「…………じゃあ俺が代わりに大事にしてあげる。俺にとって、君を1番価値のある人にしてあげる」
「……なにそれ」
「だから君は俺のことを、君の中で1番価値のある人だと思って」
「なんで」
「なんでも、だよ」

分からなかった。
なんで貴方が私にそこまで言ってくれるのか。
価値のない私には何一つ分かってあげられなかった。
でも、だからこそ、私は彼を"私の1番"にしておかなきゃいけない気がした。
1番にして、彼を私の大事なものにして、彼の怒りについて分かるまで、私は彼の傍にいなきゃ行けない気がした。
そうしないと、彼の何かを台無しにしてしまうような気がしたから。

「俺が言ったこと、今は意味が分からなくていいからさ」
「……うん?」
「いずれ分かった日が来たら俺に教えてね」

頭を優しく撫でてくれる大きな手に少しばかりのこそばゆさを覚えながら、私は彼のためにも小さく頷いた。

8/12/2025, 8:47:55 PM

・真夏の記憶

「こっち来ないで」
なんて、暑がりの君なら昔はそう言ってたはずなのに。
それが今じゃ季節関係なく俺に引っ付いている。
……いや、正確には俺に"引っ付かれている"のだけど。
座ってる彼女の後ろからいつもの様にハグをしているが昔ほど拒否はせずその場に居座ってくれるのは、きっと彼女なりの信頼と甘えなのだろう。
「あっづいなぁ……」
「……ふふっ」
「え、なに」
「いつの間にこうなったんだろうねぇ」
本当に、いつからこんな風に気を許してくれるようになったのか。
うりうりと彼女の頭を撫でながら昔を思い出そうとしてみるが、自分のせいで暑さに耐える羽目になった彼女の様子を見ているとわざわざ思い出す必要も無い気がして。
「これからも熱中症にならない程度に甘えさせてね」
祈りにも似たワガママを伝えて今日も彼女の頭に頬を擦り寄せるのだった。

2/1/2025, 4:27:03 PM

・バイバイ

貴方と別れただけじゃない。
未練と別れたの。
情と別れたの。
思い出と別れたの。
望んでいた未来と別れたの。
たった一人の人間と離れただけで私は沢山のものに別れを告げなきゃいけないのに、貴方は「私」と別れるだけで終わるんでしょう?
そんなの許せるわけないじゃない。

せめて私が、貴方への怒りや憎しみともお別れ出来ていれば良かったのにね。

1/30/2025, 9:10:37 PM

・まだ知らない君

ご縁が無い、と嘆く君を慰める。
俺からすればわざわざ一緒にいて不安になるような人との縁なんか無くていいと思うけど、彼女の求める縁がそれならば仕方ないのだろう。
"俺にすればいいのに"
今日も飲み込むこの言葉をいつか君にぶつけられたら、俺は君の思うご縁になれるのだろうか。

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