異雪

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・答えは、まだ

分からなかった。
なんで貴方が私に怒ったのか。
私が私を雑に扱うことなんて、私にとってよくある事なのに。私にとって日常の1つなのに。
それなのに貴方は私に怒った。
"もっと自分を大事にしなさい"って。

「でも、私が私を大事にしてたら、もっと価値のある人の邪魔になっちゃうし……だったら自分より他人を優先したいよ」
「…………じゃあ俺が代わりに大事にしてあげる。俺にとって、君を1番価値のある人にしてあげる」
「……なにそれ」
「だから君は俺のことを、君の中で1番価値のある人だと思って」
「なんで」
「なんでも、だよ」

分からなかった。
なんで貴方が私にそこまで言ってくれるのか。
価値のない私には何一つ分かってあげられなかった。
でも、だからこそ、私は彼を"私の1番"にしておかなきゃいけない気がした。
1番にして、彼を私の大事なものにして、彼の怒りについて分かるまで、私は彼の傍にいなきゃ行けない気がした。
そうしないと、彼の何かを台無しにしてしまうような気がしたから。

「俺が言ったこと、今は意味が分からなくていいからさ」
「……うん?」
「いずれ分かった日が来たら俺に教えてね」

頭を優しく撫でてくれる大きな手に少しばかりのこそばゆさを覚えながら、私は彼のためにも小さく頷いた。

9/16/2025, 1:33:31 PM