SunFlower

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2/2/2024, 2:58:43 PM

ドイツに住むソフィアは、想いを寄せていたディルクに、ディルクの好きな花をつもうと思った。
その花は、綺麗な青紫色で、水辺に沢山咲いていた。
崖を降りようとしたが、ワンピースの裾が足に引っかかり、うっかり滑らせてしまった。
そのまま下へ落ちてしまい、水の中へと消えてしまった。
ディルクもソフィアのことが気になっていたので、死んでしまったのが、悲しくて仕方なかった。
毎日、ディルクはソフィアのお墓にあの花を供えた。
ある水曜日、ディルクはソフィアのお墓に、花と一緒に手紙も添えた。
手紙には、 『 ソフィアへ 君のことは忘れないからね。ソフィアも僕のことを覚えててね。見守ってくれたら嬉しいな。 ディルクから 』
と、書いた。
勿忘草は、ドイツ語で「Myosotis sylvatica」。
私を忘れないでという意味。

1/31/2024, 12:29:45 PM

私はここが嫌いだった。
緑の草に、羊が沢山いて、分厚い綿雲が、草原に大きな影を作るだけ。

大きくなって、街に出た。あそことは違って、お店が沢山並んでいた。嬉しくて、そこにずっと居た人みたいに、気取って歩いた。田舎で着ていたワンピースが、地味に見えて恥ずかしくなった。
お洒落なお店で新しい服を買った。白いブラウスに、薄紅色のカーディガン、千草色のスカートの上に、赤茶色のベルトをしめた。
いつもはお団子にしていた金色の髪もほどいた。
少し人気のないところに行った。それでも、私にとってはやっぱり街中だった。
黄色い目の白猫がひょこひょこと走っていた。
猫につて行った。
いつの間にか、知らないところに来ていた。そこは、狭い路地で、ボロボロの服を着た人達が地べたに座っていた。お金をくれと言われた。あいにく服を買って、あげたら自分のが無くなってしまう程だったので、「服を買ってないので、あげられません、ごめん」と、事情を説明した。「分かった」と言ってくれるのを想像していたが、そうではなかった。「なんでだよ、くれるまで帰さないぞ」と、キラキラ光るナイフを見せてきた。何が何だか分からなくなり、その場から走って逃げようと、勢い良く振り返った。
全速力で逃げた。後ろを向かずに走った。
人気(ひとけ)のある街に戻った。
まだ胸がドキドキしていた。追ってこなかったのが、不幸中の幸い
一旦家に戻ることにした。電車に乗って、家に1番近い駅で降りた。靴を手に持って、草原を走って、勢い良く家の扉を開けた。お母さんが立っていた。
「早かったね」と笑顔で言われ、一気に緊張がほどけて力が抜けたみたいだった。
前はあんなにここが嫌いだったのに、広い草原も、赤く染った夕焼けの広がる空も、全てが美しく見えた。
旅路の果てに、そこの素晴らしさが分かることもあるということを知ったみたいだった。

1/30/2024, 12:06:00 PM

町外れの草原で、私は小さな男の子に出会った。
その男の子の瞳は、お日様に照らされる海の表面みたいに輝いていて、深海みたいに深く、岩にあたって砕ける波のように透き通っていた。そんな瞳に見守られていたのは、少し枯れてきた草の生える草原に咲く、小さな白い花だった。もう、頬を撫でる風が冷たくなった頃だったが、そんなことはかまわず、その花は活き活きと一生懸命咲いていた。
「花、可愛いね」、思わず男の子に話しかけてしまった。初めて会った女の人に、急に話しかけられたら怖いだろう。ごめんと言おうと口を開こうとした時、「うん、この花可愛い」と、私の琥珀みたいな目をみて、話してくれた。じっと見てきたから、深くてキラキラと星の散るような瞳に目を逸らしてしまいそうになった。

その男の子は、穏やかに流れている川の近くに住んでいた。その家から、お母さんとお姉さんが出てきた。そして、「そろそろ戻っておいでよ!」と、男の子を呼んでいた。花を眺めていて、家に戻るのに時間がかかりそうだったから、「お母さんたちが呼んでたよ?」と言うと、「分かった」と言って、家に戻って行った。

3ヶ月ほど経って、またあの草原に向かった。
またあの男の子はいるだろうか、またあの眩しすぎる瞳で見つめ返してくれるだろうか。
草原を見渡した。居なかった。そこにあったのは、1輪だけで、寂しそうに咲いている花だけだった。
体が勝手にあの子の家へと向かっていた。ドアをノックして、あの子が出てくるのを期待していた。
出てきたのは、あの時のお姉さんだった。
「どちら様ですか?」と聞かれた。「この前、あの花の咲いている草原で、綺麗な瞳の男の子と話したんです。久しぶりにここに来て、あの子、いるかなって思ったんですけど、居なかったので、どうしたのかなと思って。」「あぁ、ノアのことですね。今寝込んでるんです。誰かに移る病気ではないんですけど、2ヶ月くらい前から、体が動かせなくて」と、青い目を涙で潤ませた。「会えませんか?」ダメ元で聞いた。1度しかあったことの無い大人を家に入れるはずがない。知っていたが、期待3割で聞いた。少し驚いた顔をして、「いいですよ。あなたのことは、ノアからも聞いていたんですよ。会えて良かった」と、嬉しそうに言ってくれた。
男の子の部屋まで案内してくれた。
「あの花、まだ咲いてるの?」と、私の顔を見た途端に聞いてきた。覚えてくれていたことに驚いた。「うん、あの時と変わらずに、元気だよ」と言った。「良かったあの花見たかったんだけど、見れないから嫌なんだ」と真っ直ぐ私の目を見て話した。「つんできてあげようか?」と聞くと、「いい、あの花は、あそこに咲いていなきゃダメなの。」と、涙目で言った。分かったよと、頷いた。「また会いに来るからね」と、今までで1番明るい笑顔を見せて帰った。

あの日からしばらくして、家に一通の手紙が届いた。知らない住所からだった。
『ノアが 死にました 。来てくれてありがとう。 』
信じられなかった。すぐには涙が出なかった。
まだあんなに小さくて、まだ瞳はすんでいたのに。
何時間か経って、大粒の涙が目からこぼれた。
私はあの草原へ行った「また会いに来るからね」
花に向かって呟いた。
あなたに思いを届けたい

1/29/2024, 11:26:46 AM

「I LOVE」って聞いたら、次にくる言葉は「You」という単語が1番に思い浮かぶ。
けれど、答えは1つだけなんて、だけにも教わらなかった。本が好き、音楽が好き、ピアノが好き、フルーツが好き、学校が好き、夏が好き、もちろんあなたも、けど1番好きでいてあげなきゃいけないのって、自分なんだと思った。
自分を好きでいて、大切にできて、愛せて、いつでもマイペースで、そうでなくちゃ、本も音楽も、ピアノもフルーツも、学校も夏も、そして、あなたも愛せないと思った。
と言ったって、自分を好きになって、大切にするのは案外難しかった。どうしても、あなたが優先になっていた。けど、みんなそうなんだって思った。
そうやって、自分を愛せずに苦しむのも、自分を傷つけてしまう、1つの方法なんだと知った。
自分の好きなところなんて、片手で数える程しかない。けど、今落ち込むのはまだ早い。早すぎ。
何でもいいの、絵が上手、話すのが好き、聞くのが好き、好きな人の横にいるのが好き、夢を見るのが好き、別に、目立つことをやってなんて、きっと誰も望んでないから、できることからやって見て、それを伸ばせば、自分に自信がつくのかもしれない。
それが上手くいかなくたって、挑戦することに限りはなくて、なんでもやりたい事に、今すぐ挑戦できるのが、自分の凄いところで、偉大なところで、計画を立てて慎重に始めるのも、どちらも自分の素晴らしいところなんだ。苦手を克復する前に、好きを伸ばして、誰にも真似出来ないことをやればいいんじゃない?
美しいのは、宝石でも、花びらでもなくて、自分の持っている、綺麗な心だと思う。
I LOVE Me
そう言える日が今すぐじゃなくても、何年後でも良いから、いつか来てくれたら嬉しいな。

1/28/2024, 2:45:42 PM

私はランプをつけ、開けられない窓に映る月を見た。
もう慣れた頃だろう、この人生は変えられないんだ。
権力はあっても力は無い。
もう諦めなよと、今晩も自分に言い聞かせた。
私はもう、ここには居たくなかった。
出かける時は、執事が着いてくるし、一日の予定に自由時間なんてものは無い。
ピアノに英語に油絵に、お父様の知り合いとのお茶会に、お母様とのパーティー。
知ってる人はいない。いるはずない。
好きなことをできるのは、夢の中だけ。、
厳重に我が家を守る鉄の門。
はたから見たら、きっと、この家は大きくて、立派で、羨む人だっているはず。家が嫌いな訳では無い。ただ、環境が嫌い、大嫌いなだけ。
私の部屋から見える、あの街に今すぐ行きたかった。友達とジェラートを食べる女の子、浜辺ではしゃぐ男の子、子供と手を繋ぎ、もう片方の手でカバンを持ったお母さん、腕時計を気にしながら、周りをチラチラ見ているお洒落した男の人。

ある日、お母様が熱を出した。使用人もお父様もお姉様も、みんなお母様を心配してお母様の部屋につききっきり。今なら、もしかしたら、ここから出られるかもしれない。逃げることが出来るかもしれない。
私は外のことを全然知らない。いつも行く時は、執事の後ろを着いて歩くだけだったから。走っても、「ワンピースの裾が汚れますよ。」とか、「街は汚くて、悪い人ばかりいるから早く帰りましょ?」とか、どうしても私をここに居させたくないみたい。
そんなのことを考えながら、レースの着いた若葉色のポンチョを身にまとっていた。フードを頭にすっぽりと被り、顔が見られないようにした。みんながお母様の部屋に入ったところを見て、お母様のことも心配だが、それよりも、ここからどこかに行けると言う嬉しい気持ちが上まった。お母様の部屋とは反対側の廊下を通って、1階へと降りていった。音が出ないように、いつもより丁寧に大きく分厚い扉を開いた。
今までで1番、蝶番が大きく聞こえたみたいだった。
あの鉄の重い門を精一杯の力を込めて開き、とうとう外に出た。みんなへの申し訳なさと、嬉しさで、心の中がぐちゃぐちゃになった。まるで、パレットの上で、絵の具同士が混ざったみたい。
初めて1人で出た外だった。急に不安になったが、その不安をかき消すように、青く広がる空を見つけた。
太陽も、私を見てくれているような気持ちだった。
街へ行くには少し時間がかかる。歩いている最中、ドキドキして、胸がはち切れそうだった。
ポケットに入っていた小銭を広場でお店を出しているアイスクリーム屋さんに渡した。あの女の子たちが食べていたジェラートを頼んだ。初めてのアイスクリームを時間をかけて味わった。
街に着いた時、嬉しくて涙が溢れそうになった。
行く宛てもなく、日がどんどん下へ沈んで行った。
街にある公園の噴水の近くで眠った。
すると、肩を揺さぶられた。目を開くと、制服を着た痩せた男の人がたっていた。キョトンとしていると、その人が、自分は警察だと話した。そして、近くの交番まで連れていかれた。夜に女性が1人でいるのは危ないらしい。住所を聞かれたので教えたが、それは間違いだったことに、目が覚めてきて気付いた。私は警察の人に家へと送られた。警察の人は、扉を叩き、出てきた使用人に私を渡した。また、あの生活が戻ってきたらしい。開けることの出来ない窓を眺めて呟いた。またあの街へ行きたいな。
もう遅い時間だった。そう思い私はランプを消した。

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