SunFlower

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町外れの草原で、私は小さな男の子に出会った。
その男の子の瞳は、お日様に照らされる海の表面みたいに輝いていて、深海みたいに深く、岩にあたって砕ける波のように透き通っていた。そんな瞳に見守られていたのは、少し枯れてきた草の生える草原に咲く、小さな白い花だった。もう、頬を撫でる風が冷たくなった頃だったが、そんなことはかまわず、その花は活き活きと一生懸命咲いていた。
「花、可愛いね」、思わず男の子に話しかけてしまった。初めて会った女の人に、急に話しかけられたら怖いだろう。ごめんと言おうと口を開こうとした時、「うん、この花可愛い」と、私の琥珀みたいな目をみて、話してくれた。じっと見てきたから、深くてキラキラと星の散るような瞳に目を逸らしてしまいそうになった。

その男の子は、穏やかに流れている川の近くに住んでいた。その家から、お母さんとお姉さんが出てきた。そして、「そろそろ戻っておいでよ!」と、男の子を呼んでいた。花を眺めていて、家に戻るのに時間がかかりそうだったから、「お母さんたちが呼んでたよ?」と言うと、「分かった」と言って、家に戻って行った。

3ヶ月ほど経って、またあの草原に向かった。
またあの男の子はいるだろうか、またあの眩しすぎる瞳で見つめ返してくれるだろうか。
草原を見渡した。居なかった。そこにあったのは、1輪だけで、寂しそうに咲いている花だけだった。
体が勝手にあの子の家へと向かっていた。ドアをノックして、あの子が出てくるのを期待していた。
出てきたのは、あの時のお姉さんだった。
「どちら様ですか?」と聞かれた。「この前、あの花の咲いている草原で、綺麗な瞳の男の子と話したんです。久しぶりにここに来て、あの子、いるかなって思ったんですけど、居なかったので、どうしたのかなと思って。」「あぁ、ノアのことですね。今寝込んでるんです。誰かに移る病気ではないんですけど、2ヶ月くらい前から、体が動かせなくて」と、青い目を涙で潤ませた。「会えませんか?」ダメ元で聞いた。1度しかあったことの無い大人を家に入れるはずがない。知っていたが、期待3割で聞いた。少し驚いた顔をして、「いいですよ。あなたのことは、ノアからも聞いていたんですよ。会えて良かった」と、嬉しそうに言ってくれた。
男の子の部屋まで案内してくれた。
「あの花、まだ咲いてるの?」と、私の顔を見た途端に聞いてきた。覚えてくれていたことに驚いた。「うん、あの時と変わらずに、元気だよ」と言った。「良かったあの花見たかったんだけど、見れないから嫌なんだ」と真っ直ぐ私の目を見て話した。「つんできてあげようか?」と聞くと、「いい、あの花は、あそこに咲いていなきゃダメなの。」と、涙目で言った。分かったよと、頷いた。「また会いに来るからね」と、今までで1番明るい笑顔を見せて帰った。

あの日からしばらくして、家に一通の手紙が届いた。知らない住所からだった。
『ノアが 死にました 。来てくれてありがとう。 』
信じられなかった。すぐには涙が出なかった。
まだあんなに小さくて、まだ瞳はすんでいたのに。
何時間か経って、大粒の涙が目からこぼれた。
私はあの草原へ行った「また会いに来るからね」
花に向かって呟いた。
あなたに思いを届けたい

1/30/2024, 12:06:00 PM