SunFlower

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私はここが嫌いだった。
緑の草に、羊が沢山いて、分厚い綿雲が、草原に大きな影を作るだけ。

大きくなって、街に出た。あそことは違って、お店が沢山並んでいた。嬉しくて、そこにずっと居た人みたいに、気取って歩いた。田舎で着ていたワンピースが、地味に見えて恥ずかしくなった。
お洒落なお店で新しい服を買った。白いブラウスに、薄紅色のカーディガン、千草色のスカートの上に、赤茶色のベルトをしめた。
いつもはお団子にしていた金色の髪もほどいた。
少し人気のないところに行った。それでも、私にとってはやっぱり街中だった。
黄色い目の白猫がひょこひょこと走っていた。
猫につて行った。
いつの間にか、知らないところに来ていた。そこは、狭い路地で、ボロボロの服を着た人達が地べたに座っていた。お金をくれと言われた。あいにく服を買って、あげたら自分のが無くなってしまう程だったので、「服を買ってないので、あげられません、ごめん」と、事情を説明した。「分かった」と言ってくれるのを想像していたが、そうではなかった。「なんでだよ、くれるまで帰さないぞ」と、キラキラ光るナイフを見せてきた。何が何だか分からなくなり、その場から走って逃げようと、勢い良く振り返った。
全速力で逃げた。後ろを向かずに走った。
人気(ひとけ)のある街に戻った。
まだ胸がドキドキしていた。追ってこなかったのが、不幸中の幸い
一旦家に戻ることにした。電車に乗って、家に1番近い駅で降りた。靴を手に持って、草原を走って、勢い良く家の扉を開けた。お母さんが立っていた。
「早かったね」と笑顔で言われ、一気に緊張がほどけて力が抜けたみたいだった。
前はあんなにここが嫌いだったのに、広い草原も、赤く染った夕焼けの広がる空も、全てが美しく見えた。
旅路の果てに、そこの素晴らしさが分かることもあるということを知ったみたいだった。

1/31/2024, 12:29:45 PM