小さい頃から空を見上げては
何もいない空間を目で追っていたらしい
母は聞く
「何を見ているの?」
僕はいつも
「大きな鳥が飛んでいるんだ」
そう言っていた
今もその鳥は飛んでいる
昔よりも近い距離で
大きな翼を広げて大空に浮遊している
こちらにおいでよと手を伸ばして
何度も行こうとしたが
僕にはまだあの大空は似合わない
いつかあの鳥のように飛べる日が来るのだろうか
昔の記憶
大きな煙突のある家で心弾ませ布団に潜った
彼が来てくれることを
今か今かと待ち侘びていつの間にか眠っていた
眠っていても彼を待つ意識はある
ふと枕元に人気を感じて飛び起きた
赤い服を身に纏った白髪の男
彼だ!彼が来たんだ!僕は見たぞ!
すると体の力がふっと抜けて布団に倒れ込んだ
彼は優しく微笑んでいた
凍えそうなほど寒い季節
寒さなど感じない規則的な部屋の中で
今年もあの音がする
耳をつんざくようなベルの音
赤い服を着た白髪の彼が枕元で笑っているんだ
君は何を見ているんだろう
何を好んで、何を求めて、何を得ているのか
僕は知らない
ずっと君の隣にいたけれど
君を知るのが怖かった
君の頭の中に僕はいるのだろうか
”誰もが認める親友”
誰がそんなことを言ったのか
分かり合っているなんて
互いが唯一無二だなんて
笑える
想っているのは僕だけだ
僕は君を知らないし君も僕を知らないよ
いつでも完璧な君
強かに美しく輝く華
誰もが認め憧れる星
華はいつか枯れ
星は落ちるように
彼にもある
誰も知らない彼の秘密
僕と君だけの内緒事
僕にだけは見せてくれる彼の顔
僕だけが知っている
その優越感に頬が綻ぶ
彼と視線が交わるたびに知らないフリ
互いに他人のように何でもないフリ
青色の春
赤色の夏
橙色の秋
灰色の冬
色々な季節が過ぎ去った
あの頃の自分は幸せだと思えていただろうか
喜怒哀楽に勤しんだ青春のページ
思い返す今は幸せだったと思うよ
いつだって周りには誰かが、友人が、仲間がいた
”生きる”という行為には必要なもの
次の世界にはどんな人間がいるのだろうか
白紙のページが美しく彩られるだろうか
最高の仲間に出会えることを期待するよ