君と見上げる月は、どんなに綺麗だろうか。
揺れる船の上、真っ暗な中に月明かりで照らされた海
2人きりの甲板、そこに流れる星空や穏やかな時間。
海の音、風の心地良さ、隣に居る君の息遣いの1つ、
きっとどこを切りとっても眩しい、真っ暗なのにね。
目を瞑っても、息を吸ってもずっと胸が苦しいまま、
ふと、君をすこし見上げてほっとする。
そんな時間、2人きりの静かな時間。
そっと流し目で見る君の横顔に、目を奪れる事だろう
そのままずっと見つめていたいと、
愚直で、安直で、でも素直な気持ちを抱えながら、
自分らしくない、乙女じゃないんだぞと呆れる。
それでも少し、少しだけ目を細めて身をよじる、
この気持ちが、幸せが、君にバレてしまえばいい。
そうしたら、このまま何も言わずに済む、
このまま君と、退屈で幸せなこの時間を過ごしたい。
何か一言でも話せば、世界が崩れてしまいそうで、
もどかしくて、そんな曖昧な風に揺られている。
目を伏せて海を見つめる。
いつもと違いドクドクと高鳴る鼓動を感じる、顔に当たる風を冷たく感じる、気持ちいい。
頬杖を付く、なんでもないように自然に、自然に…目線を落として、袖に口元を埋めて。
聞こえないように、ボソッと小さく呟く。
『……月が、綺麗ですね』
言い出せなかった「ぜんぶ」
苦しいよ?
そりゃ苦しいさ。
でも苦しいからなんだって言うんだろう、
何が変わるんだろうか。
苦しいって言いたいよ、
でも目の前の人に「苦しいの?」って聞かれると、
ダメなんだ、どうしても『大丈夫!』
…って笑いかけたくなるの。
なんでだろ!
気づいて欲しいのに、気づいて欲しくなくて、
いざとなると怖気付いて、怖くなる。
へんなの〜って他人事のように、
心の中で呟いて思うこと。
…あぁ、誤魔化したい。
全く!体調悪いのにな!不思議だよ、…あはは。
素足のままで、砂浜を走る。
あついのでまともに砂に足をつけない、
しかし、そんなことより海だ!
私は海が好きだった。
なんでかは正直分からない、でも。
何かいつも、真新しいワクワクをくれるから。
なんとなく、海が好きだ。
やっと波打ち際、色が変わった砂に足を置く。
波が動くのが不思議でじっと観察してしまう、
なんでこんな動くんだろ!
そうしているうちに、大きめの波がやってきた。
足の間を流れる波、思ったより勢いがあって怖い、
しかしそんなスリルにもワクワクが勝つ。
直ぐに波が引いていく、逆再生みたいで面白い。
でもちょっと足がくすぐったい!
ウキウキした気持ちのまま、後ろを振り返って。
はしゃいで置いてきてしまった両親を発見する。
「早く来ればいいのに!」
足音がする。
誰のだろうと耳を澄ます。
人の話し声、他にも歩く人のざわめきやあくびの音。
それ以外でも、毛色の違う無機質な音。
ぴ!ガタン…!あ、分かりやすい。
目を向けなくても直ぐに自販機の音と分かる。
しかしどうして沢山人がいる中で、
誰のかも分からない足音が耳に残っているのだろうか
私にもよく分からない、がとても気になる…
まぁ、私の中ではよくある事だけれど。
気が散った矢先、多分飽きたので。
いつもと同じく目線を上げ、電線にさえぎられた青空を観察する。
今日は普通にいい天気だ、いい青色!
感動してそのまま眺めていると、空が狭まり周りが暗くなる。電車と屋根の隙間が少し眩しい。
あれ?早かったな…、と少しハッとする。
電車の内側の窓、上がってきた階段を見つめながら。
…結局誰の足音だったんだろ?
あ、もしかしたら同じ電車かな…!
思わず辺りを見渡してしまうが無駄に決まっている。
気づいて即座にやめると少し恥ずかしくなった。
でもきっと、誰が足音を鳴らしたかじゃなくて。
騒がしい中で、誰かも知らない一人の人間の足音、
それを耳に残して、何かを感じ気に停めた。
この余白の方が、多分もっと知るべきことだ。
あー!人の感性って面白いなぁ〜!!
と素早く切り替えた私は、ワクワクしながら。
景色が流れていくドアの隅に身を寄せるのだった。
私の心の羅針盤は、いつも物語の中に居た。
ゲームに漫画、アニメやドラマ、映画にも。
絶えずあるのは、別世界に生きる人間。
しかし、物語はあくまでフィクションである
という人がいるのも否めない、確かにそれは事実だ
極端に言って仕舞えば、物語は人が作った嘘話。
でも、考えてみて欲しい、
人間界に嘘じゃ無いものなんてあるのだろうか?
”あぁ、多分無いな。” というのが私の感想だ。
お金も地位も言葉も仕事も、全部人が作り出し、
勝手に信じてるだけの嘘なのだ。
つまり何が言いたいかと言うと…
脱線しすぎて正直私にもよくわからない笑
だけど、言いたいことがあるとすれば、
物語は嘘なんかじゃない。
私が確かに信じれば、それは真実になり得る。
時に感動させられて、たまに絶望させられて、
救われて、慰められて、愛したくもなる。
自分の命を使ってそれでも何かを教えてくれる、
物語の中に生きる人間の生き様は、いつでも輝かしい
まるで指針のように人間の可能性を見てせてくれる。
物語ってものはいつでも私の羅針盤であり、
肩を組めるような相棒なのだ。