君と見上げる月は、どんなに綺麗だろうか。
揺れる船の上、真っ暗な中に月明かりで照らされた海
2人きりの甲板、そこに流れる星空や穏やかな時間。
海の音、風の心地良さ、隣に居る君の息遣いの1つ、
きっとどこを切りとっても眩しい、真っ暗なのにね。
目を瞑っても、息を吸ってもずっと胸が苦しいまま、
ふと、君をすこし見上げてほっとする。
そんな時間、2人きりの静かな時間。
そっと流し目で見る君の横顔に、目を奪れる事だろう
そのままずっと見つめていたいと、
愚直で、安直で、でも素直な気持ちを抱えながら、
自分らしくない、乙女じゃないんだぞと呆れる。
それでも少し、少しだけ目を細めて身をよじる、
この気持ちが、幸せが、君にバレてしまえばいい。
そうしたら、このまま何も言わずに済む、
このまま君と、退屈で幸せなこの時間を過ごしたい。
何か一言でも話せば、世界が崩れてしまいそうで、
もどかしくて、そんな曖昧な風に揺られている。
目を伏せて海を見つめる。
いつもと違いドクドクと高鳴る鼓動を感じる、顔に当たる風を冷たく感じる、気持ちいい。
頬杖を付く、なんでもないように自然に、自然に…目線を落として、袖に口元を埋めて。
聞こえないように、ボソッと小さく呟く。
『……月が、綺麗ですね』
9/14/2025, 3:43:49 PM